
有人で運転を再開し、事故のあった新杉田駅に向かう新交通システム「シーサイドライン」=2019年6月6日、横浜市磯子区
大阪市のニュートラム事故(1993年)は原因不明のまま
厄介なのは、EMIやクロストークの現象は不確実で、事故原因として特定しにくいことだ。電子回路や部品の経年劣化、落雷、宇宙放射線、整備エラーなど様々な要因も影響する。
1993年、大阪市のニュートラム南港ポートタウン線で、シーサイドラインと類似した暴走事故が起きた。住之江公園駅に進入した電車が減速せずに60メートル暴走し、車止めに衝突して210人が負傷した。
事故調査委員会は運行を1か月半停止して原因を調査した。部品の接触不良が見つかったが、事故との関係ははっきりせず、結局、「ブレーキ指令系統の極めてまれな一時的導通不良」という苦しい内容の報告書になった。
大阪のニュートラムは事故後、万一暴走が起きた時は非常ブレーキで停止させる装置を新たに導入。安全の確保を無人で行うことの困難さを抱えつつ26年間運転を続けている。
新幹線は時速30キロ以下なら運転士が手動で操作
新幹線の運転はどのように行われているのだろうか。運転士が発車ボタンを押すと、次の到着駅に近づくまでのスピード管理は全てコンピューターが行う。しかし、到着駅の近くで時速30キロまで減速すると、あとは運転士が停止するまで手動で運転する。これなら車両が駅構内で暴走する心配はない。
新幹線も完全な自動運転にすることは可能だが、全部をコンピューター任せにしないのは、運転士の技量を維持する目的もあるという。もし自動システムが故障したとき、手動運転ができる運転士がいなければ、復旧に支障が出る。人間が関与する余地を意図的に残しているのは賢明だ。