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EU離脱交渉、メイ首相はどこが間違っていたのか

次期与党・保守党党首の最有力候補は「合意なき離脱」も辞さず?

小林恭子 在英ジャーナリスト

準備不足で、後手に回る

 2017年3月29日、メイ首相は2年間にわたる、EUとの「離脱交渉」を開始した。離脱派からの早期交渉開始への要求に押された形だ。国民投票から数カ月が過ぎ、「いつ腰を上げるのか」といういら立ちが国民の中で生まれていたのも事実だ。

 一方のEU側は、離脱決定の2016年から、どのように離脱するべきかについての戦略を着々と構築していた。

 2017年6月になって、いよいよ英政府とEUとの間で実質的な交渉が始まった。

 準備万端のEU側は英政府に「2段階交渉」を求めてきた。第1段階ではEU市民の取り扱い、清算金の支払い、北アイルランド国境問題について先に議論を進め、この3つの点において一定の成果が出たとEUが判断した後で、第2段階の通商交渉を始める、という形だ。

 英政府側は通商交渉に先に手をつけるか、あるいはそのほかの事柄と通商問題とを同時に交渉することを望んでいたが、EU側は頑としてこれに耳を貸さなかった。

 EU加盟国の英国を除く27カ国と英国との対立である。数的に負けているのは明らかで、そのマイナス面を補うほどの戦略が英国側にはなかった。

 数カ月間の交渉の後で、英国はEUが敷いたレールの上に乗り、2段階による交渉を行うことに同意した。最初から最後まで、英政府の対応は後手に回った。

思いつきで総選挙を実施し、政権を不安定化させた

 「総選挙はしない」と再三言ってきたメイ首相だったが、2017年4月、メイ首相の支持率は最大野党・労働党のコービン党首の支持率を20ポイント以上上回った。これを機に、政権基盤をより安定させるため、メイ首相は下院選実施(同年6月)を宣言した。

 しかし、先日の記事でも書いたが、国民に対するアピール力に欠けるメイ氏は議席数を減少させて選挙を終えた。議席の過半数を割ってしまったことで、北アイルランドの離脱強硬派政党「民主統一党(DUP)」に閣外協力を頼まざるを得なくなった。メイ政権の離脱交渉の行方が、

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筆者

小林恭子

小林恭子(こばやし・ぎんこ) 在英ジャーナリスト

秋田県生まれ。1981年、成城大学文芸学部芸術学科卒業(映画専攻)。外資系金融機関勤務後、「デイリー・ヨミウリ」(現「ジャパン・ニューズ」)記者・編集者を経て、2002年に渡英。英国や欧州のメディア事情や政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。「新聞研究」(日本新聞協会)、「Galac」(放送批評懇談会)、「メディア展望』(新聞通信調査会)などにメディア評を連載。著書に『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス(新書)』(共著、洋泉社)、『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)。

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