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インバウンド狙いの地域観光は日本の魅力失わせる

「地域文化」より「日本文化」求める外国人で、日本観光は金太郎飴になってしまうのか

南雲朋美 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

地域魅力で産地を活性化した「肥前吉田焼」

 3年前までは誰も歩いていなかった集落に月平均600人もの観光客が訪れるようになった場所があります。旅行会社もここをメインにしたツアーを月に2、3回催すほどの人気ぶりで、今年のGWは、過去最高の売り上げを叩き出したそうです。

 その場所は、佐賀県嬉野市の吉田地区にある「肥前吉田焼」という磁器の産地です。

南雲さん2拡大佐賀県嬉野市吉田地区には窯元の煙突が見える=肥前吉田焼窯元組合提供

 「肥前吉田焼」がある嬉野市は有田焼で有名な有田町に隣接しています。この焼き物は、有田焼同様に400年以上の歴史があるにも関わらず、佐賀県内はおろか嬉野市内でも知らない人がいるほど認知度は低かったのです。

 2016年に私が地域活性化プロジェクトに参画した当時の産地経済は、最盛期の1960年代と比較すると8分の1という規模で、30社あった窯元も8社(組合加盟)という惨憺(さんたん)たる状況でした。

 このプロジェクトは、肥前吉田焼を作っている窯元有志が集まって、技術力向上や後継者育成を通じて産地の活性化を図るというものでした。デザイン・コンペティションを行い、デザイン性のある食器を作って東京で展示会を行うなどして磁器自体の商品力を向上する中で、産業観光的なコンテンツにも着手するようになりました。

「認知」と「魅力」と「広報」がきも

 産業観光で特に力を入れたのは「認知」と「魅力」と「広報」です。

 ものが売れない最大の理由は「存在を知らないから」なので、人に来てもらうためには「告知」をして「認知」を上げていかないとなりません。その「告知」のきっかけになるのが「魅力」であり、手法が「広報」です。

 ザイオンス効果(別名:単純接触効果)によれば、人は購入に至るまでには最低7回はその名前に接触しないと行動しない、とあります。このセオリーに従えば、何回も「告知」しなければ消費行動につなげることはできません。「告知」するためには「魅力」も継続して創出し続ける必要があります。私が星野リゾートで広報を担当していた時代は、そのようなやり方で「認知」を上げて宿泊施設の稼働率アップやブランド向上に寄与してきました。

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筆者

南雲朋美

南雲朋美(なぐも・ともみ) 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

1969年、広島県生まれ。「ヒューレット・パッカード」の日本法人で業務企画とマーケティングに携わる。34歳で退社後、慶應義塾大学総合政策学部に入学し、在学中に書いた論文「10年後の日本の広告を考える」で電通広告論文賞を受賞。卒業後は星野リゾートで広報とブランディングを約8年間担う。2014年に退職後、地域ビジネスのプロデューサーとして、有田焼の窯元の経営再生やブランディング、肥前吉田焼の産地活性化に携わる。現在は滋賀県甲賀市の特区プロジェクト委員、星野リゾートの宿泊施設のコンセプト・メイキングを担うほか、慶應義塾大学で「パブリック・リレーションズ戦略」、首都大学東京で「コンセプト・メイキング」を教える。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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