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老後2000万円不足問題、小泉進次郎の本気度

参院選前に幕引きを急ぐ政府・与党内でひとり抜本改革を唱えるが……

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

拡大衆院財務金融委で答弁する金融庁の三井秀範・企画市場局長。左は麻生太郎財務相兼金融担当相=2019年6月14日

ぶれる麻生金融相

 今回の騒動の火元は麻生太郎金融相であることに異論はない。

 報告書が公表された翌日の閣議後記者会見で麻生氏は報告書について問われ、「俺の生まれたときの平均余命を知っているか?」と切り返した。尋ねた記者は「60歳ですか?」と回答した。

 これに対し、麻生氏は「47だ。人生設計をするとき100まで生きる前提で退職金を計算してみたことあるか。俺はないと思うね」などと述べ、今のうちから人生設計を考えておかないといけない」と基本的な考えを示した。金融庁事務方からの事前レクチャーを受け麻生氏なりの自分の言葉で表現したのだ。この時麻生氏は報告書の内容について特段問題視をしていない様子だった。

 しかし、これが大手新聞などで「老後2000万円赤字」などと批判的内容が報道され、インターネットで拡散していった。まさに炎上が始まったのだ。麻生氏はこれをまず自ら火消しにいったが、これがさらに火に油を注ぐ結果になった。

 麻生氏は報告書について公的年金だけではあたかも生活ができず、平均的な収支が2000万円の赤字となることについて「表現が不適切だった」と陳謝した。政府・与党として「公文書」とは認めるが、「政府としてのスタンスが異なる」などとして「金融審議会が承認したわけではないから正式な報告書ではなく、作業部会の議論をまとめた途中経過」と結論付けた。

 金融審などの審議会は大臣が有識者ら専門家に議論を諮問し、大臣はその結果を答申してもらう関係にある。関係者の意見を踏まえ、大臣の政策決定の参考とすべく、古くから使われた手法だが、これを自分からしておいて都合が悪くなったので、それを黙殺するというのだ。

 麻生氏は正式な報告書ではないとの意味について「政府として政策遂行の参考とならない」と述べ、金融審会長が報告書の扱いをどう検討するかの問題と切り捨てた。ここまでメンツをつぶされた金融審メンバーは全員一斉辞任したらどうか。

結局、役人が腹切りか

 金融庁の三井秀範・企画市場局長は6月14日の衆院財務金融委員会の冒頭で「事務局として配慮を欠いていた。改善したい。反省とお詫び申し上げる」と一方的に陳謝した。森友学園問題で国会答弁した、佐川宣寿・国税庁長官(当時)の時と同じである。

 当時、佐川氏が財務省や麻生氏をかばって引責辞任したのと同様に、金融庁の組織防衛のため決死の覚悟しているようである。事務局として報告書を世に出した責任を自ら認め謝らないと事態は収束しないと忖度したのであろうか。この金融庁幹部は野党議員からの追及に、「事務方の粗相というか、私の落ち度であった」とまで全面的に非を認めたのだ。

 これに対して、麻生氏は報告書について「内容全部がダメだと言っているのではない。一部に問題があった」と記述を問題視。「(報告書を取りまとめた)金融庁事務方の配慮が足りなかった」と部下のせいにしているかの様子だった。

 麻生氏は自身の対応が変遷したことについて「公的年金制度について不安が広がり著しい誤解が生じている」と説明。異例の事態になったのを払しょくするため、報告書を受け取り拒否とすることに至ったとしている。

 筆者もずっと委員会の質疑を聞いていたが、野党の追及と議論はかみ合っていない。麻生氏のこれまでの一連の態度にある種の「上から目線」を感じるのは筆者だけだろうか。

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。著書に『点検ガバナンス大改革―年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値』(R&I編集部編共著、日本経済新聞出版社)などがある。17年7月退社。

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