フランスやイタリアのように育児や教育への福祉政策を充実すべきだ
2019年07月01日
今年に入って2度目のトレント(イタリア北部のアルプス直下の町)訪問だった。
コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授が主催する世界経済変革委員会(Commission on Global Economic Transformation)の会議が再びトレントで開催されたからだ。
ローマ空港からベローナ空港に飛んでそこから車で1時間半。東京から待ち時間を入れるとほぼ1日かかる行程なのだ。ただベローナからトレントのドライブはブドウ畑を横目に見ながらの快適なものだった。
イタリアに来ると何かほっとするのは、長い歴史を持った地方郡市や村落が美しいことだ。アメリカで同じようなドライブをすると、時として貧困が垣間見られるのだが、イタリアでもフランスでも目立った貧困を見ることはほとんどない。
社会福祉が行き届いていて、多くの人々がそこそこ豊かなのが原因なのだろう。消費税率20%前後と高福祉・高負担の大きな政府なのだが、高負担に対する反発は強くない。消費税20%前後に人々が慣れていて、それ故の高価格を受け入れているからなのだろう。
所得税だと問題なのだろうが、消費税は物価に転嫁されているので、それなりの物価高に慣れてしまえば、それ程抵抗はないということなのだろう。しかも物価は税だけで決められる訳ではない。旅をしていても、イタリアやフランス等が特に物価高だと感じることはあまりない。
消費税10%への引き上げでも抵抗が強かった日本では20%は問題外だと考えられることが多い。
日本はアメリカ等と並んで低負担・低福祉の国。確かに、年金・医療等で老人の福祉はそこそこ高いが、ヨーロッパ諸国と比べると出産・育児・教育に対する福祉のレベルは高くない。フランス等では、公立校でも月謝はタダ。私立校に対してもかなりの補助がある。
どこまで福祉の範囲を拡大するかは様々な議論があるところだが、教育費がばかにならない日本は、そのために少子化が進んでいるとも言われている。3人4人の子供を持つと、とても教育費をまかなえないということなのだ。
出産・育児・教育等への補助の効果もあって、フランスでは一時1.6まで低下していた出生率が2.0まで戻してきている。長い年月がかかったのだが、福祉政策の効果がきいてきたということなのだろう。
他方、日本では合計特殊出生率が1.4を切っている。このままでは人口減少に歯止めがかからない。教育費等への考慮もあって子供を3人以上持つ家庭が少なくなってきているのだ。
筆者は3人兄弟の長男、当時は子供が3人というのはそれ程珍しくなかった。筆者の子供は2人、そしてその2人が結婚して、それぞれ2人の子供を持っている。子供2人なら人口は減少しないのだが、未婚の男女や子供1人の家庭も少なくいことを考えると、子供2人では人口減少は避けられないということになる。
戦前のように産めよ、増せよと国家が旗を振るということではないが、3人以上子供を持った家庭に対する優遇策は必要ではないだろうか。
例えば、フランスでは3人以上の子供を持つ家族に対して様々な優遇策が存在している。公共料金を安くしたり、税金の優遇措置を行ったりしているのだ。前述したように出生率が2.0まで回復したのは、こうした政策の結果でもあったのだろう。
国家が家族に直接介入する必要はないし、また、望ましくもないが、間接的に大家族を優遇する政策はあってもいいのだろう。
日本の老人達はそこそこ豊かな人達が少なくない。貧困はむしろ若年層で目立ってきているのだ。フランスやイタリアなどのように、育児や教育等に対する福祉政策を充実して若年層に対する福祉を拡大すべきなのではないだろうか。
政府がどこまで介入するかについては様々な議論があるところだ。
ヨーロッパのように福祉の幅を拡大し、大きな政府(高負担・高福祉)にすべきなのか、アメリカのように市場競争を重視して、小さい政府(低負担・低福祉)にすべきなのかは、確かに、議論の分かれるところだろう。
しかし、久しぶりにイタリアに来て感じるのは、
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