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安倍首相が掲げる「年金増額」の真相

参院選が終われば「年金改革」はこうして進められる~消費税再増税の影

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

拡大通常国会が閉会し、記者会見に臨む安倍晋三首相=2019年6月26日、首相官邸
 安倍晋三首相は国会閉会後の記者会見で「政策次第で年金を増やすことは十分可能」と述べた。今後の年金改革はどうなるのか。実は参院選後の「年金改革」へのレールはすでに敷かれている。やるべき方向性は決まっているのだ。

劣化した世界最先端の年金

 厚労省は1961年に主に自営業者らを対象とする国民年金を創設し、世界に先駆けて国民皆年金を実現した。諸外国の公的年金に比べても遜色なく、先進的なものだった。当時の関係者の並々ならぬ努力の賜物だろう。

 1985年には全国民共通に給付する基礎年金が創設され、公的年金制度が再編された。

 そして2004年の大改革を経て、社会保障改革は国民の知らないうちにひっそり動き出している。厚労省が今年2月の社会保障審議会で示した「今後の社会保障改革について―2040年を見据えて―」がそれだ。

 厚労省としては、有識者ら専門家が社保審、年金・医療・介護・子育てといった各分科会で議論した結果を受け、制度設計した格好を取りたい。非常に厳しい社会保障の姿を示すことで改革不可避であると結論付けるのが狙いだ。

 今、現役世代の40~50歳代が65歳に達し、本格的な高齢期を迎える時期を見据え、この先15年間を見越した社会保障改革の新たな局面と課題を示したのである。

オプション試算に注目

 厚労省は年金について近く5年ぶりの財政検証の結果を公表する方針だ。

 財政検証は「現行制度のままならこうなる」という本体試算と、「仮に制度改正すればこうなる」とするオプション試算から構成される。このうち重要な示唆があるのは、後者のオプション試算の方だ。

 厚労省は前回2014年の財政検証から、マクロ経済スライドの仕組みの見直し、被保険者の更なる適用拡大、保険料拠出期間と受給開始年齢の選択制といったオプション試算を示した。今回の財政検証では、60歳以降も働くなどして一定の収入のある人の年金額を停止する在職老齢年金の廃止が実現した場合などについてより詳細のオプション試算を出す見通しだ。

 財政検証の結果は、年金局数理課が算定している。彼らはその道のプロだ。たとえ計算上でも問題のあるオプション試算は出してこない。オプション試算は年金制度のさらなる改正に資する目的で示しているので、野党らの「財政検証の内容が悪いから公表が遅れている」という指摘は的外れだ。

 そもそも、財政検証についても、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用実績を公表する予定日と同様、事前に決定しておけば、あらぬ誤解は招かなかったであろう。財政検証を通常国会の会期中の6月に出そうが、閉会中の8月に出そうが、来年次期国会に法案を提出するには十分な時間があるからだ。

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。著書に『点検ガバナンス大改革―年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値』(R&I編集部編共著、日本経済新聞出版社)などがある。17年7月退社。

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