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年金改革~消費税さらなる増税は不可避の現実

政府のGDP推計はあまりに希望的観測。2040年ニッポンの姿は――

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

「経産省の希望的観測」

 今後の人口推計は厚労省傘下の国立社会保障・人口問題研究所の「日本の将来推計人口(2017年推計)」の出生中位(死亡中位)を前提としている。これまでの人口研の実績値を見ると、2000年度の高齢者数は2204万人だったにもかかわらず、2015年度には3387万人と15年間で1183万人増加した。

 今回示した試算では、高齢者の増加のペースが変わることなどから、2018年度の高齢者数は3561万人だったが、2040年度に3921万人にとどまるという。全人口に占める高齢者の割合は2000年度から2015年度の15年間では6.8%ポイント程度上昇したのに対して、2025年度から2040年度の15年間では2.1~2.2%ポイント程度の上昇にとどまると見込む。

 つまり、日本の高齢化スピードは急激に鈍化することになり、社会保障給付費の伸びも抑制されるという見立てだ。

 これに対して、名目GDP成長率については内閣府の中長期の経済財政に関する試算(2018年1月)などを踏まえて計算している。この内閣府が推計する名目GDP成長率の予測は財務省の中長期の財政再建計画を含め様々な政策決定の前提となる重要な統計だ。

 しかし、ある財務省OBは内閣府の推計について「いろいろ盛りすぎで最近はほとんど経産省の希望的観測だが、これまでやむを得ず使ってきた」と打ち明ける。

厚労省に選ばれた「社保審」の人々

 先の社保審の会合で、GDPについて言及する人は皆無だった。触れてはいけない所与の前提なのであろう。社保審のメンバーは厚労省に選ばれた人だから、基本的に厚労省に都合の悪い人はそもそも選ばれない。

 財務省OBでマクロ経済の専門家である法政大学経済学部教授の小黒一正氏はこの内閣府の名目GDPの成長率予測について「実績とのかい離に関する検証や改善方法を検討する必要がある」と真っ先に指摘してきた1人だ。このような楽観的な成長前提で適切な長期シナリオを検討できるはずがないのだ。

 社保審に限らず、学者は別として、経済界など団体から代表して議論に参加する利害関係者がそれぞれの団体の立場を言いがちだ。

 たまに不規則発言もある。例えば、社保審でも日本医師会の今村聡副会長が医師の働き方改革の問題など多くの課題を指摘するとともに、「実践的な社会保障教育が義務教育において自ら自分事として社会保障を考えられるような実践教育を行っていただきたい」と発言した。おそらく医師会の立場ではなく、氏の個人的な見解としての発言と思われるが、言論が完全に封じられているわけではない。

 もちろん、議論の素材としてある程度の具体的な数字を示さなくてはならないのは理解できる。しかし、議論のベースとなる数字があまりにも現実とかけ離れているのであれば、それは議論の方向性を見誤ることにならないか。

 筆者は見せ方の問題で、15年先の2040年の社会保障の姿がどうなるかは厚労省にもわからないのではないかと思う。予算や単価の置き方次第で、数値は何とでもなるからだ。将来実現するかわからないGDPをもって、社会保障給付費が今と比べて抑制されるから、制度の持続可能性に問題がないというのは、国民を欺く方便ではないか。

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。著書に『点検ガバナンス大改革―年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値』(R&I編集部編共著、日本経済新聞出版社)などがある。17年7月退社。

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