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参議選を左右する一人区、鍵を握る農家票

農家は減っているのに、農家票が重みを増すカラクリとは――

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

拡大果樹園での第一声を前に桃を食べる自民党の安倍晋三総裁=2019年7月4日、福島市
  7月5日の朝日新聞は「命運握る一人区」という見出しで、74地方区の中の32の一人区について、「わずかな票差でも当落が決まり、全体の結果を左右する」と述べている。

 与野党とも認識は同じである。安倍総理率いる自民党は、前回の参議院選挙で敗北した11選挙区を含む16選挙区を「激戦区」に指定、特に1勝5敗と大きく負け越した東北地方の一人区を重点的にテコ入れする考えである。

 立憲、国民民主、共産の野党も、共倒れを回避するため、32選挙区すべてで候補者を統一し、与党と対峙している。

 さらに、6日付けの朝日新聞は「序盤の情勢 一人区激しい争いも」と題し、一人区のうち、秋田、長野、愛媛、沖縄で野党候補がリードし、岩手、宮城、山形、新潟、滋賀で競り合いとなっていると分析している。

保守的な地域で自民苦戦

 沖縄は基地問題、愛媛と滋賀は野党が人気のある候補を擁立したという事情があるだろう。しかし、それ以外は東北、信越地域である。長野は伝統的に野党勢力が強いという事情があるが、それ以外の東北、新潟は保守的なイメージが強く、ここで自民党候補が苦戦していることに意外に思われる人が多いのではないだろうか?

 これらの地域には共通点がある。いずれも、経済や社会のなかで農業の占める役割や地位が大きい。しかも、農業のうち米の占める比重が他地域に比べて高い。

 安倍政権になって、農業界が反対してきたTPPに参加したこと、2014年産の米価が大きく下落したことが、前回の参議院選挙で自民党が東北地方区で1勝5敗と大きく負け越した原因だと言われている。

 その前の2013年の参議院選挙では、自民党は一人区で29勝2敗と大勝した。しかし、この選挙でも、安倍内閣になってから参加を決定したTPP交渉に不満を持つ山形県の農協組織が対立候補の支援に回ったため、自民党候補は48%対45%というわずか3%の差でかろうじて逃げ切るというきわどい選挙となった。

 つまり、東北などの「激戦区」では農家票が選挙を左右しているのである。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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