メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

韓国を「仮想敵国」に? 半導体輸出規制

政権トップの言動が憎悪とナショナリズムをあおる

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

高性能の日本の材料に依存する韓国メーカー

拡大

 上の表にあるように、規制対象の3品目は対日輸入依存度が極めて高い。フッ化ポリイミド(高強度・高絶縁性のフィルム)とレジスト(感光材=回路パターンの転写に利用)は90%台、エッチングガスも40%台である。

 半導体の製造は約500工程あり、コンピューター制御による精緻な調整の上で稼働している。工程の一つでも欠けると生産はストップし、使う素材が別の企業の製品に変わるだけでも品質管理が困難になるほどだ。

拡大半導体製造には精緻な先端技術が要求される=東京エレクトロンHPより

 例えばレジストの場合、日本製品は5ナノメートル(1ナノは10億分の1)の超微細加工を可能にするが、韓国産は10ナノメートルが限界。汎用品は作れても、世界最先端で競争する製品は作れない。

 韓国は1980年代から、部材の購入先を欧米企業に広げようとしてきたが、実を結んでいない。品質が優れて納期が正確、輸送距離が短いという日本企業の利点があまりに大きいからだ。

韓国を「安保友好国」から「仮想敵国」に変更か?

 日本政府は半年以上前から、極秘に業界の専門家を交えて100を超える先端製品をリストアップし、どれを規制すれば韓国に最大の打撃を与えるかを調べてきた。

 経済不振が続く韓国で、半導体は自動車と並ぶ輸出の柱である。その半導体分野で韓国が簡単には輸入多角化できない3品目を選び出し、安倍首相の主導のもとに巧みに報復を仕掛けた。

 日本政府は今回の措置に踏み切った理由を、「不適切な事例があったからだ」と説明する。どんな事例かは言わないが、経済産業省は記者会見で「軍事転用や最終需要者以外の第三者に渡った可能性」に触れた。

 これは日本の「準同盟国」や「安保友好国」であった韓国を、「安保憂慮国」あるいは中国並みに「仮想敵国」扱いすることを意味する、と韓国は受け止めている。「日米韓」から外れた韓国が「中露北」に近づいていることへの「警告」という見方もある。

 安倍首相の周到さは、7月1日という発表のタイミングにもうかがえる。自由貿易を謳ったG20が終わった直後なので、各国首脳から直に批判を受ける心配はない。G20で安倍首相が文在寅大統領との接触を徹底して避けたのは、今にして思えば、事前通告なしに不意打ちする腹積もりだったからだろう。

 またこの日は参院選公示の直前であり、選挙に向けて国民に「強い日本」「決める政党」を印象付けるには絶好のタイミングでもあった。ネットでは「すっきりした」「韓国をもっと叩け」などの反韓ナショナリズムがあふれている。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

木代泰之の記事

もっと見る