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京友禅の現場から見えてくる京都クライシス

地元の人が去り、コミュニティーがなくなっていくのは心が痛みます。

亀田富博 株式会社亀田富染工場 / PAGONG 取締役、小布施北斎館 若者委員、Global Shapers Kyoto Hub

ホテル建設狙い地価・賃料値上げ

 日本に帰ってきてから10年。インターネットやSNSが広く普及し、京都の情報が世界へ広がり、京都の魅力が世界中の人に知られるようになりました。

 以前は、京都駅でも海外の方はちらほら見かけるくらいでした。しかし、今はほとんどが海外からの旅行者なのではないかと思うほど様々な言語が飛び交っています。まるでどこか違う国の空港にいるのではないかと思うような、そんなグローバルな駅へと様変わりしました。

 バスやタクシー乗り場には大勢のスーツケースを持った観光客が列を作り、ホテルやゲストハウス、民泊へと向かう人たちで長蛇の列ができています。これだけの人が本当に京都に泊まれるのだろうか、京都にこれだけの人を受け入れる容量はあるのだろうか、と心配になっていました。

京都クライシス2拡大京都の街中ではいまもあちこちでホテル建設が行われている=筆者提供

 案の定、ホテル不足が騒がれ、市内はホテル建設ラッシュです。多くの投資家や大企業が市内の土地を買い、ホテルへと変え始めました。それは瞬く間に行われ、市内の中心部はそこら中がホテルに変わってきており、今も建設が行われています。ホテル建設のために市内中心部の住宅には不動産売却のチラシが配られ、今までの2倍以上の坪単価で取引されています。ホテル用地獲得のために賃貸物件やテナントの賃上げが行われ、退去せざるを得なくなったというケースもあると聞きます。もともと住んでいた住民は、2倍以上の価格で売れるのならばと、中心地の土地を手放す人も増えてきました。

 両親の実家では、こんな話が頻繁にでてきます。

 「近所の○○さんが土地売ったらしい」
 「いくらで売らはった」
 「あの空き地もまたホテルになるらしい」

 かろうじて残っていた商店街の一部もホテルへと変わり、残っていた地元の肉屋さんも空き地へと変わってしまいました。

京都クライシス2拡大京都市内には売出し中も空き地も点在する=筆者提供

落ち着いた街はもう京都にない

 海外の人も京都に魅力を感じ、訪れて、楽しんでくれるのはうれしいし誇りに思います。ただ、その街にあった家やお店がなくなり、ホテルに変わり、地元の人たちがいなくなる――。

 そしてコミュニティーがなくなっていくのは心が痛みます。

 残った住民は、家賃や地価の高騰と闘わないといけないし、街を歩いてもこれまでの落ち着いた京都の街はそこにはもうありません。

 地下鉄もバスもスーツケースを持った人たちで混雑し、百貨店に行っても店員は海外のお客様に化粧品を売るのに忙しそうです。錦市場は観光のシンボルになり、地元の人が買い物をするような場所とは程遠い存在へと変わりました。

 民泊やゲストハウスは銭湯の近くに作られています。銭湯が近いというメリットがそれらのウェブサイトには書かれ、落ち着いて入れる銭湯は減りました。地元の人にとってなくなったものは多いし、街の観光地化がいたるところで始まっていると生活していると感じます。

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筆者

亀田富博

亀田富博(かめだ・とみひろ) 株式会社亀田富染工場 / PAGONG 取締役、小布施北斎館 若者委員、Global Shapers Kyoto Hub

京友禅アロハシャツ・カットソーの店 PAGONGにてデザイン、WEBページ制作、海外事業などを担当。大学卒業後、ロンドンに留学。ファッションや音楽、様々な人種が混ざり合う多様性を学ぶ。帰国後は外資系アパレルにてファッションの流通を学んだ後、家業の染屋に入社。京友禅の魅力を活かした商品作りを行い、海外市場の開拓と伝統産業の発展に注力している。