メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

通訳ガイドが外国人客のニーズをつかむポイント

「語学の専門家」というだけでは通訳ガイドができない理由を探りました。

古屋絢子 全国通訳案内士(英語)

②なぜいまの日本と日本人のリアルな姿を教えてほしいのか?

 日本人の一般的な気質として「本音と建前」がある。それゆえに日本人は何を考えているかわかりにくい、という印象を持つ外国人も少なくない。ガイドの際、一般的には政治と宗教の話には慎重になるが、特に欧米のお客様ははっきりとした口調で「安倍政権についてどう思うか?」と、一般論と個人の意見を同時に尋ねられる。

 東京都内のガイドの際は、東京周辺で暮らす人の生活について様々な切り口から紹介する。住まい、働きかた、家族、医療、教育、余暇の過ごし方、年金……。意外と思われるかもしれないが、ガイド中の話題は観光地の説明や歴史・文化のみならず、政治経済、社会問題もカバーすることになる。

③なぜ特定のテーマで案内をしてほしいのか?

 お客様の要望をもとに組み立てるカスタムツアーの中には、個人の趣味や嗜好が色濃く反映されたものもある。先日案内したアメリカからの60代のご夫妻は、ご主人が万年筆のコレクター。これまでにネットショッピングで購入歴のある専門店をリストアップし、2日間の東京都内のツアーで、そのうちの数カ所を訪問するように旅程を組んだ。驚いたことに、数件の専門店には彼らのような海外からのお客様が足を運んでいた。ひとつのことを極めるマニアに国境はないのだと実感した。

 観光とは一味違った、印象深いツアーも紹介しよう。

 依頼主は20年前に東京都内に3年ほど暮らした経験のあるアメリカの50代女性。大学生のお嬢さんが友人と来日するので、彼女の生まれた病院と当時住んでいたアパートを探し出して連れていってほしい、という内容であった。ツアー当日、若い娘さんとともに、地図を片手にバスや電車を乗り継ぎ目的地へ。閑静な住宅地の中で小さなアパートが当時のままの姿で残っていたのを発見したときには、全員で拍手喝采して盛り上がった。

インバウンド2拡大日本庭園にて茶道体験=筆者提供

④なぜ旅先で出会う日本人との橋渡しをしてほしいのか

 この要望は潜在的なもので、茶道や陶芸などの文化体験でお世話になる先生や職人さんといった、予定されていた場での通訳と、たまたまお店や電車で隣り合った人との会話の通訳の2種類がある。

 前者はあらかじめ先方と打ち合わせし、当日の体験内容の英訳や、補足説明などを準備することが可能である。しかし、後者は時と場合によっては、ガイドが仲介せず、あえてお客様と地元の方で直接コミュニケーションをとってもらうほうが良いこともある。

 いずれにせよ、情報の発信者がガイド本人でないときは、自分の存在を主張せず黒衣に徹するように心がけている。


筆者

古屋絢子

古屋絢子(ふるや・あやこ) 全国通訳案内士(英語)

全国通訳案内士(英語)。東京都出身、お茶の水女子大学大学院修了。日本科学未来館、東京大学を経て2013年に全国通訳案内士試験合格。現在は1年のうち5か月以上、外国人観光客を対象としたツアーを全国各地にて実施する。さらに年間2カ月近く官公庁、自治体主催のインバウンド研修、ガイド養成講座等にて講師をつとめる。 【通訳ガイド稼働実績】*言語は全て英語 2017年度:120日 (個人ツアー 110日 / 団体ツアー10日) 2018年度:170日(個人ツアー 60日 / 団体ツアー110日) 【主な講師実績】 環境省国立公園満喫プロジェクト 人材育成支援業務(検討会委員、講師) 文化庁ミュージアムマネジメント研修(講師) 地域通訳案内士養成講座(行政主催・飛騨地域、佐渡地域、金沢市) 特例通訳案内士養成講座(行政主催・福島県) ボランティアガイド講座(埼玉県行田市、東京都江東区、新潟県長岡市) 専門学校(神田外語学院国際観光科、文京学院大学)

古屋絢子の記事

もっと見る