武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト
1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
強行離脱派のジョンソン氏への懸念は少なく、環境改善への期待も根強い
ヨーロッパの政経情勢についてヒアリングするため、7月初め、ロンドンへ出張した。昨年後半以降、減速が明確な景気の実態や金融政策のスタンス、EU議会選でも確認されたポピュリスト政党の台頭とその影響、EU首脳人事など、話を聞きたいテーマは数多あったが、なんといっても気になるのはイギリスのEU離脱、すなわちブレグジットの行方であり、その重要なカギを握る次期首相の人選だった。
日本同様、議員内閣制をとるイギリスでは、首相には与党の党首が就く。メイ首相が6月7日、党首を辞任したことを受け、与党の保守党では現在、後任の党首選びが佳境を迎えている。
10人の候補で始まった党首選は、5回の議員投票を経て、ボリス・ジョンソン前外相とジェレミー・ハント現外相の2人にまで絞り込まれており、7月22日の週には約16万人の保守党員による決選投票を経て、新党首が決まる予定。新党首はエリザベス女王の任命により、新首相に就任する。ここまでジョンソン前外相が圧倒的なトップを維持していることから、ハント外相の追い上げも及ばず、ジョンソン新首相の誕生となりそうである。
と、ここまでは、日本でも報道されている通り。だが、今回のロンドン訪問で抱いたのは、ジョンソン氏は「合意なき離脱」(No-deal Brexit)も辞さない強硬離脱派で、彼の勝利はイギリス経済にとってリスクだという見方が一般的だと思っていたロンドンで、そうした懸念を感じることが少なかったことへの意外感だった。