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ブレグジットに楽観的な英国人?その理由は……

強行離脱派のジョンソン氏への懸念は少なく、環境改善への期待も根強い

武田淳 伊藤忠総研チーフエコノミスト

ハードルが高い円滑な離脱、EU残留の可能性も

 ただ、こうした楽観論は、あくまでも一つの見方に過ぎないことは言うまでもない。最大のリスクは、ジョンソン新首相が仮に円滑な離脱を目指しても、上手くいくとは限らないことである。

拡大英国のメイ首相=2019年4月11日、ブリュッセル
 そもそもメイ首相の交渉が頓挫したのは、EU、イギリス議会の双方が納得する「離脱協定案」をまとめられなかったからであり、この作業はまだ残っている。しかも、最後に議会が否決した時から状況に大きな変化はない。さらに、EUは一貫して離脱協定案の修正に応じない姿勢を示しており、仮に新首相がイギリス議会に配慮した修正案をまとめたとしても、それをEUに認めさせるのは至難の業である。EUが認めない場合は、10月末に自動的に合意なき離脱となる。円滑な離脱のハードルは高いのである。

 その一方で、メイ首相が議会を通せなかった現行の離脱協定案のままでも、ジョンソン氏なら議会の理解を得られるのではないか、という見方もある。強硬派最右翼のジョンソン氏ですら現行案での妥協やむなしと判断するのなら仕方がない。あるいは、離脱協定案の修正に代わる何らかのものを約束してくれるなら、議会で過半数の賛同を得られるのではないかという見方である。

 確かに、離脱協定案はこれまで議会で3回否決されたが、反対と賛成の差は回を重ねるごとに縮小している。とはいえ、今のところ、過半数の賛同が得られるメドが立っているわけではない。

 EU離脱自体が阻まれる可能性もある。ジョンソン新首相がEUとの交渉、ないしは議会の説得に苦戦し、期限切れで合意なき離脱が避けられないという状況になった場合、野党がEU残留を旗印に掲げてジョンソン内閣の不信任案を議会に提出、可決されるというシナリオである。こうした流れで総選挙となれば、不信任案を通したEU残留派が勝利する公算が大きく、ブレグジットは撤回されるだろう。


筆者

武田淳

武田淳(たけだ・あつし) 伊藤忠総研チーフエコノミスト

1966年生まれ。大阪大学工学部応用物理学科卒業。第一勧業銀行に入行。第一勧銀総合研究所、日本経済研究センター、みずほ総合研究所の研究員、みずほ銀行総合コンサルティング部参事役などを歴任。2009年に伊藤忠商事に移り、伊藤忠経済研究所、伊藤忠総研でチーフエコノミストをつとめる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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