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変わる家族や結婚のかたちから考える社会問題

親の子育て責任は、無限に続くのではない。

土堤内昭雄 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

家族Akkalak Aiempradit/shutterstock.com

変わる家族や結婚のかたち

 わが国は少子高齢化という人口構造とともに、家族の形である世帯構造の変化が著しい。「世帯」とは『住居及び生計を共にする者の集まり』だが、その規模を示す平均世帯人員は、2015年時点で全国が2.38人、東京都ではすでに1.99人(区部は1.91人)と2人を下回っている。

 2015年の国勢調査による家族類型別一般世帯割合は、「単独世帯」が34.5%、「夫婦のみ世帯」が20.1%と、2人以下の世帯が半数を超えている。多くの人は「家族」とは複数人で構成されるものとイメージしているかもしれないが、家族の現状は大きく異なる。

 NHKテレビ「きょうの料理」という番組で使用されるテキストでは、以前は4人分のレシピが掲載されていたが、現在では2人分が多い。食事づくりのレシピをみても、近年の日本社会が小規模世帯を中心とする「縮小する家族」の時代を迎えていることがわかる。

 家族の形だけでなく結婚の形も大きく変わっている。西欧や北欧では事実婚の割合が半数を超えている国もあり、結婚を法律婚に限るのは社会の実態と乖離している。それらの国々では結婚の試用期間として事実婚から結婚生活をスタートし、家族の成熟とともに法律婚に移行する人も少なくないからだ。

 また、日本国憲法では同性婚は想定しないとされているが、世界的には同性婚を容認する国が増えている。今日の結婚や家族を巡る状況は多様になり、伝統的家族観にも大きな影響を与えている。変わる家族の姿を理解することは、現代社会を読み解く上できわめて重要だ。

 かつて夫婦と子ども2人の家族を「標準世帯」と呼んだ。30年以上前の家族社会学では父親や母親がいない「ひとり親世帯」を「欠損家族」と称していた。結婚や出産をはじめ家族のあり方は時代とともに大きく変わり、関連する用語も実態に合わせて適切に見直さなければならないだろう。

ひきこもる家族

 5月28日、川崎市多摩区で登校のためスクールバスを待っていた児童などが殺傷される事件が起こり、6月1日には東京都練馬区で元農林水産事務次官が長男を殺害する事件が発生した。前者の51歳の容疑者と後者の44歳の長男が、ひきこもり状態にあったことが世間の大きな関心を集めている。

 「ひきこもり」というと若い世代を想像する人も多いだろうが、今年の3月に公表された内閣府の「生活状況に関する調査」(平成30年度)からは意外な実態が見えてくる。広義の「ひきこもり」とは『自室や家からほとんど出ない状態や近所のコンビニ、趣味の用事以外に外出しない状態が6カ月以上続くこと』と定義される。

 同調査の推計では、40~64歳の中高年のひきこもりが全国で約61万人と、平成27年度調査で推計された15~39歳の約54万人を上回っているのだ。ひきこもり期間は5年以上が51.0%と半数を超えており、ひきこもりの長期化がうかがえる。

 ひきこもりになったきっかけ(複数回答)は、「退職」が36.2%と最も多く、就業状況との関係が深い。中年のひきこもりが多い理由としては、バブル崩壊後のいわゆる「就職氷河期」に安定した仕事に就けなかったことが挙げられるだろう。政府は経済財政運営の基本方針(骨太の方針)の中で同世代の就職支援を強化し、今後3年間に30万人の正規雇用者を増やす計画だ。

深刻化する「8050問題」

 従来、主に家庭内で対応してきた介護や子育ては、徐々に制度が整い、社会的なサービスが提供されるように変わってきた。しかし、「ひきこもり」は、ひきこもる人と家族の高齢化により、80代の親が50代の子どもを支えるという「8050問題」が深刻化している。その一方、今でも家庭内の問題とみなされがちだ。

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