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子育て一段落世代を引きつける通訳ガイド

自分の力を生かしたい――。そう考える世代を狙って地域ガイド養成講座が続々

古屋絢子 全国通訳案内士(英語)

地域によっては需要に追いつけない

 通訳ガイドには、「全国通訳案内士」と「地域通訳案内士」がある。ともに国もしくは都道府県・市町村が認定するプロの通訳ガイドだが、いくつかの相違点がある。

 一つは案内できる地域の違いだ。全国通訳案内士は全国あらゆる地域が対象なのに対し、地域通訳案内士は地域が限定されている。

 もう一つは、養成課程だ。全国通訳案内士の場合、国家試験(筆記および面接試験)がある。合格者は、任意で通訳ガイド団体に所属し、新人研修を受講してガイド業務・技術の基礎を学ぶ。さらに旅行会社などに自分を使ってもらうように営業に行き、そこから仕事を依頼されてプロデビューを果たすことになる。

 かたや地域通訳案内士の場合、対象となる地域で所定のカリキュラムを受講し、修了試験を経て合格となる。優秀で熱意のある地域通訳案内士は、その地域で即戦力として期待される。修了後、独り立ちして通訳ガイドとして報酬を得ていくので、筆者のような全国通訳案内士のライバルになる、と考える人もいる。

インバウンド3拡大福岡・天神の屋台で、人気の焼きラーメンを楽しむ香港からの2人連れの観光客(手前)

 しかし、筆者は、両者が共存しうると考えている。これまで全国通訳案内士の空白地域、ツアーの需要はあるのに全国通訳案内士の供給不足地域にとって、意欲のある地元の通訳ガイドが生まれることは、インバウンドの受け入れが進むことにつながる可能性が高い。ガイド同士が切磋琢磨してサービスの質を高めることで人材の厚みを増すことにつながり、報酬をアップさせていく可能性もある。

人生経験・地域の居住経験が生かせる場

 筆者が各地の地域通訳案内士の養成講座の講師を務めていて感じるのは、実はカリキュラムが充実している自治体の多さだ。筆者が講師の一人を務めたある自治体主催の講座では、約3カ月間、毎週末に開講され、以下のような講義・実習が用意されていた。

・地域のインバウンド受け入れの取り組み紹介
・地域の地理・歴史
・地域の産業と特産品
・旅程管理業務
・異文化コミュニケーション
・外国語
・ガイド実地研修

 別途、救急救命講習の受講も義務付けられていた。これだけ濃密なカリキュラムを短期間に消化するのは厳しいと思うほどでの内容だ。振り返って、筆者のような全国通訳案内士でさえ、ガイドに必要なスキルをこれほど効率よく学べる機会は滅多にない。

 そして、どの地域で講師をしても、受講生の人材の豊かさと、彼らの郷土愛の強さに驚かされる。日中、通りを歩くと高齢者ばかりを見かける地域でさえ、こと人材に関しては、私の予想以上に多様な背景を持つ個性的な受講生に出会えた。

・勤め先を定年退職した人(予備軍含む)
・都市部から移住した人
・子育てが一段落した人
・インバウンド関連の起業をしている人

インバウンド3拡大ガイドの女性(左)に日本語のメニューを見せてもらいながら、説明を聞く外国人観光客たち=広島市中区

 もちろん、すべての修了者が即戦力になるとは限らない。しかし、ガイドに必要な心構えや基礎知識を備えた人が地域コミュニティーの中で、あらゆる生活シーンで活躍することは、その地域のインバウンドの受け入れ環境を良い方向に推進する力となるだろう。

 筆者が担当する科目は、「外国語」や「ガイド実地研修」だが、受講する人たちと話すと、人生経験や海外在住経験、地域の地理・歴史の知識、どれをとっても筆者よりはるかに豊かな、いわば人間としての幅を持つ人が少なくないことがわかる。

 そんなとき、つい格好を付けて妙に凝った表現を使ったり、細かな知識の披露に走りたくなったりすることを控えるようにしている。実は、通訳ガイドをしていても、外国人客のバックグラウンドによっては、そのように振る舞いたくなってしまうことがあるかもしれない。そこで注意をしなくてはいけないのが、あくまでも基本に忠実な通訳ガイドをすることだ。

インバウンド3拡大商店街でおでんを選ぶ外国人=東京都江東区

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筆者

古屋絢子

古屋絢子(ふるや・あやこ) 全国通訳案内士(英語)

全国通訳案内士(英語)。東京都出身、お茶の水女子大学大学院修了。日本科学未来館、東京大学を経て2013年に全国通訳案内士試験合格。現在は1年のうち5か月以上、外国人観光客を対象としたツアーを全国各地にて実施する。さらに年間2カ月近く官公庁、自治体主催のインバウンド研修、ガイド養成講座等にて講師をつとめる。 【通訳ガイド稼働実績】*言語は全て英語 2017年度:120日 (個人ツアー 110日 / 団体ツアー10日) 2018年度:170日(個人ツアー 60日 / 団体ツアー110日) 【主な講師実績】 環境省国立公園満喫プロジェクト 人材育成支援業務(検討会委員、講師) 文化庁ミュージアムマネジメント研修(講師) 地域通訳案内士養成講座(行政主催・飛騨地域、佐渡地域、金沢市) 特例通訳案内士養成講座(行政主催・福島県) ボランティアガイド講座(埼玉県行田市、東京都江東区、新潟県長岡市) 専門学校(神田外語学院国際観光科、文京学院大学)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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