外国人とのコミュニケーションで必須な三つの配慮
島国ニッポン。「郷に入れば郷に従え」では済まない時代になった。
古屋絢子 全国通訳案内士(英語)
日本に来る年間3000万人を超える外国人客を通訳ガイドするために、筆者の古屋絢子さんは「三つの配慮」が重要だと言います。ガイドをやってみたいという人だけでなく、外国人客へのサービスを提供する人たちも欠かせません。見知らぬ地を旅していると、時々、困ったことや助けて欲しいと思うことに出くわすことがある。言葉が通じず、文化も風習も違う異国なら、さらに不安が募ってしまいます。
東京オリンピック・パラリンピックまで1年を切りました。「論座」編集部では、8月3日にワークショップ「私にもできるかも! 外国人客のガイドに必要なスキルを学ぶ」を開きます。申し込みはここをクリックしてください。(終了しました)
異文化間のギャップへの配慮
外国人客が多く訪れる地域は、もろ手で喜んでいる人たちだけではない。日本のマナーを守らないことに怒り、困惑しているという声も聞く。
もし皆さんが、外国人客のマナー違反の場面に遭遇したら、どのような行動をとるか、想像してほしい。
私の場合、案内するお客様には日本で守るべきマナーについて、具体的にとるべき行動をまず伝え、その後にその理由や背景を説明するよう心掛けている。

富士山五合目から山頂へ向かう外国人ら=2018年7月19日午前11時47分、山梨県鳴沢村
例えば、鎌倉や京都のツアーでは、1日に複数の神社仏閣や日本建築を訪問する。建物内に入る際、毎回靴を脱がなければいけない。日本人にはささいなことでも、家の中で靴を脱がない習慣の国・地域から来たお客様にとって、何度もとなると煩わしく感じられることがある。
私のツアーでは、最初の訪問場所に行くまでの会話の中で、日本人の「内と外」の意識、神聖で清浄な空間を保つための工夫として靴を脱ぐことなどの説明をしておく。すると、お客様は慣れないながらも、靴を脱いで建物内に上がることへの抵抗が少なくなる。周囲の日本人から見ても礼儀正しくふるまえたときには、お客様の自尊心も満たされ、印象的な旅につながる。

鎌倉の大仏を案内する古屋絢子さん=神奈川県鎌倉市、筆者提供
同時に、「日本での場所によるふさわしいふるまい」についての説明やお願いだけでなく、お客様の国や地域の習慣についても情報を集め、日本と大きな差がある場合を中心に、できればユーモアを交えて話しながら注意を喚起する必要がある。