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中国に追い抜かれた日本の知財裁判

世界一の知財訴訟大国・中国。知財裁判はネット中継され、誰もが見ることが出来る

荒井寿光 知財評論家、元特許庁長官

拡大知的財産専門の裁判所=2015年2月14日、北京

3 中国の知財裁判の改革

(1)中国の裁判所(人民法院)の仕組み

 中国の裁判所は、4級2審制と言われ、最高人民法院(日本の最高裁判所に相当)が1ヶ所、高級人民法院(日本の高等裁判所に相当)が32ヶ所、中級人民法院(日本の地方裁判所に相当)が408ヶ所、基層人民法院(日本の簡易裁判所に相当)が3115ヶ所設置されている。

(2)知財裁判の仕組み

① 特許等の専利権は中級人民法院が一審管轄権を有し、著作権や商標は基層人民法院が一審管轄権を有し、2審制で裁判が行われている。

② 知財は専門知識が必要なため、2014年、北京・上海・広州に中級人民法院レベルで「知識産権法院」が設置されている。

③ 2016年10月に、南京市、蘇州市、武漢市、成都市を始め16ヶ所の中級人民法院内に知識産権を専門審理する「知識産権審判廷」が設置された。知識産権法院に準ずるものであり、特許等の技術的に難しい案件の処理レベルが上がることが期待されている。日本では、1審は特許などを、東京地裁と大阪地裁が管轄し、2審は知財高裁が管轄している。

(3)世界で最初に最高裁レベルの知財法廷を設置

① 2019年1月から、最高人民法院(日本の最高裁に相当)に知財法廷を設置した。特許等の技術専門性が高い分野の民事事件・行政事件の二審が最高人民法院に一元化された。裁判官は27名で発足(近い将来100名に増員予定)。日本の知財高裁の裁判官は18名である。

② 日本や米国の知財裁判所は高等裁判所レベルであり、最高裁レベルに設置したのは、中国が初めてだ。

③ 最高人民法院に特許等の2審を一元化したことは、全国32ヶ所の高級人民法院でバラバラと裁判をするのではなく、1ヶ所の最高人民法院で裁判をすることになる。(日本で言えば、地裁の次は最高裁に行くことだ)

④ 日本の最高裁は裁判官が15名で、法律審理のみを行っている。これに対し中国の最高人民法院は、裁判官が約400名いる大きな組織で、法律審理のほか事実審理も行うが、最上位の裁判所であることに変わりはない。

⑤ 裁判官は、北京市や地方の知財法院・知財法廷から若くて専門性の高い知財裁判官を選抜して27名を任命した。今後、約100名に増員するための2回目、3回目の選抜を行う。今回任命された裁判官はすべてマスター以上の学歴を持ち、半分はドクターで、3分の1は理工学バックグラウンドを有し、3分の1は海外留学経験を有する。平均年齢は42歳と若く、40台が主力メンバーである。

 このように知財裁判の仕組みは、この数年間で、上は最高裁から、下は全国の地裁まで、急速に整備されていることには、驚くばかりだ。

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筆者

荒井寿光

荒井寿光(あらい・ひさみつ) 知財評論家、元特許庁長官

1944年生まれ、1966年通産省(現経済産業省)に入り、防衛庁装備局長、特許庁長官、通商産業審議官、初代内閣官房・知的財産戦略推進事務局長を歴任。日米貿易交渉、WTO交渉、知財戦略推進などの業務に従事。WIPO(世界知的所有権機関)政策委員、東京大学、東京理科大学の客員教授を歴任。現在は、日本商工会議所・知的財産戦略委員長を務める。(著書)「知財立国が危ない」「知財立国」(共著)

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