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お盆とお祭りから考える地域プロデュースのとば口

移住、地域活性化……地域の価値観を共有できるか、試されているかもしれません

南雲朋美 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

地域プロデュース拡大竹富島で毎年秋に行われる五穀豊穣を願う「種取祭」。10日間ほど連続で行われる厳格なもので、島民はこの日のために日々練習を重ねる=南雲さん提供
  IT化が進み、地方の中小自治体と東京など大都市における時間の進み方や情報の格差はとても小さくなりました。しかし、よそ者である私が地域を訪れた時には、時として途方にくれてしまうような差異に出会うことが、まだまだあります。

 その多くが慣習や風習に関わるもので、経営改革(改善)を目指している場合は、それを尊重すべきか、見直すべきかの見極めが必要になります。

 ちなみに、「習慣」は個人的な行動様式であるのに対して、「慣習」は特別なグループ内で引き継がれてきた行動様式を言います。「風習」は、正式には「風俗習慣」といい、行為伝承のひとつです。地理、歴史、その地域の産業の違いによって顕在化し人々の行動や思考パターンに影響を与えるものなので、お盆や祭りの類は「風習」の一つになります。

 地域の経済を牽引する源は、土地に根付く、礎(いしずえ)のようなもので、それは、その土地の土、地形、歴史から醸成されます。それらは、やがて時間の経過とともに文化や風習になると考えています。

 文化や風習は、その土地で生活する人々の知恵や経験が活かされています。従って、人間の想いの集積が文化や風習になったとも言えるでしょう。それは歴史が長ければ、長いほど、容易に穿つことができないほどに神格化し、よそ者はそれと対峙した時に、どう向き合うのかが問われることになります。

 私個人の経験から言えば、それらの中の、とりわけ、神仏にまつわることは、何よりも尊重すべきことだと思います。

地域プロデュース拡大長崎県の東彼杵で行われている「坂本浮立(ふりゅう)」という祭り。仕事後に集まって練習を行うという=齊藤晶子さん提供

 この記事を書いているのは終戦記念日であり、お盆真っ最中の8月15日。私は、海上自衛隊の潜水艦艦長だった父を持ち、広島県の呉市で生まれました。今回は、先祖や亡くなった人があの世からこちらの世界に戻ってくるという特別な日に、経済的価値とは異なる「価値観」について考えてみました。

経済活動が止まる有田のお盆

 今から4年前、私は、有田焼で有名な佐賀県有田町の何軒かの窯元と一緒に仕事をしていました。

 ある日、翌月のスケジュールを立てていると、老舗窯元の奥様から、こう言われました。

 「すみません。その時期は『お盆』なので働けません」

 てっきり、どこかに遊びに行くのか思い「いいですね! 夏休みを取られるのですね。どこに行くのですか?」と聞きました。すると、奥様は驚いてこう答えられました。

 「ご先祖様があちらの世界から帰ってこられるのに、家を空けるなんでとんでもありません。お盆はご先祖様をお迎えする準備と、ここで過ごしていただくために色々しなければいけないことがあるので、窯仕事ができないのです」

地域プロデュース拡大ご先祖様や亡くなった人が帰る家の目印になるように提灯を玄関に灯す。初盆の場合は「白い提灯」を飾るそう=南雲さん提供
 この返事を聞いた時に、この地域には私が知らないお盆の過ごし方があることに気づき、ハッとしました。この地域の方と仲良くなりたいと思っていたので、そういった風習を知ることが理解を深めるきっかけになると思い、不躾ながら、こんなお願いをしました。

 「もちろん大丈夫です。どうぞ、お盆に専念されてください。ところで、一つお願いがあるのですが、ぜひ、そのお盆の状況をレポートしてもらえませんでしょうか?」

 奥様がご承諾してくださったおかげで、有田の知られざる風習を知ることができました。

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筆者

南雲朋美

南雲朋美(なぐも・ともみ) 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

1969年、広島県生まれ。「ヒューレット・パッカード」の日本法人で業務企画とマーケティングに携わる。34歳で退社後、慶應義塾大学総合政策学部に入学し、在学中に書いた論文「10年後の日本の広告を考える」で電通広告論文賞を受賞。卒業後は星野リゾートで広報とブランディングを約8年間担う。2014年に退職後、地域ビジネスのプロデューサーとして、有田焼の窯元の経営再生やブランディング、肥前吉田焼の産地活性化に携わる。現在は滋賀県甲賀市の特区プロジェクト委員、星野リゾートの宿泊施設のコンセプト・メイキングを担うほか、慶應義塾大学で「パブリック・リレーションズ戦略」、首都大学東京で「コンセプト・メイキング」を教える。

 

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