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お盆とお祭りから考える地域プロデュースのとば口

移住、地域活性化……地域の価値観を共有できるか、試されているかもしれません

南雲朋美 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

仕事どころではない250年の風習の重み

 有田のお盆は、7月13日から15日までです。お盆のお作法は有田町内すべて同じ訳ではありませんが、ここでは、その窯元の奥様から教えてもらったものを簡単に紹介しましょう。

 仏壇の飾り付けを見ると、御膳が二つあります。聞くと、一つは「ご先祖様」のもの、もう一つは「餓鬼じょうろ様」のものだそうです。

 「餓鬼じょうろ様」とはなんでしょうか。

地域プロデュース拡大「餓鬼じょうろ様」のお膳。おがらを折った箸が3膳突き刺さったご飯と精進料理でおもてなし=梶謙製磁社提供
 奥様いわく、帰るところがない霊のことで、その霊は誰からも歓迎されなくて気の毒なので、こうやってお食事を出すそうです。茶碗にお箸のようなものが数本刺さっているのは、餓鬼じょうろ様は何人もいるからだそうです。

 そのほかに、「お迎えダゴ」というものを用意したり、「初物」をお出しするきまりがあるそうで、そのために1カ月前から家伝の奈良漬を準備されていました。この窯元さんは創業250年以上。つまり、こんなにも手間暇がかかることを250年以上も絶やさずに毎年続けられているのです。

 この地域では、初盆(今年亡くなった方がいる家で行う初めてのお盆のこと)の家を回る習慣があり、小さな町ながらも、毎年10人~20軒の家々を喪服を着ておまいりをします。黒い服の人たちが町中をぞろぞろと歩く姿は、他県から来た人たちから見れば、なかなか異様な光景なのではないでしょうか。

 ともかく有田では、お盆の準備だけではなく、初盆のおまいりをしなくてはならないので、日常的な仕事ができなくなるのです。私は当時、どちらかというと仕事優先の人間だったので、仕事でも遊びでもない行事に専念する期間があることがとても新鮮に思えました。

価値観を受け入れられるか見られている

 有田だけではありません。経済活動よりも行事を優先する地域はほかにもあります。

 住民が400人にも満たない八重山諸島にある竹富島では、島民あげての祭りがあり、住民はほぼ全員参加しなくてはならないという不文律がありました。この期間は、大人は仕事を休み、島を離れている人の中には休暇をとって戻ってくる人もいました。子どももお祭りを手伝うため、学校も休みになります。個人や有志レベルではなく、島全体が、経済よりも学業よりも、祭りが優先されるのです。

 よそ者が地域に行くと驚きの連続です。しかし、観光で訪れているわけではないので、驚いているだけではなく、その地域に飛び込んで地域の人たちと一緒になって働かなくてはなりません。その時に、異なる価値観と対峙することになるのです。

 今思えば、異なる価値観を目の当たりにしたよそ者の振る舞いや言動から、それをどう受け止めるのか、果たしてこの人と一緒に仕事をしていけるのか、それらを見られていたのかもしれません。

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筆者

南雲朋美

南雲朋美(なぐも・ともみ) 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

1969年、広島県生まれ。「ヒューレット・パッカード」の日本法人で業務企画とマーケティングに携わる。34歳で退社後、慶應義塾大学総合政策学部に入学し、在学中に書いた論文「10年後の日本の広告を考える」で電通広告論文賞を受賞。卒業後は星野リゾートで広報とブランディングを約8年間担う。2014年に退職後、地域ビジネスのプロデューサーとして、有田焼の窯元の経営再生やブランディング、肥前吉田焼の産地活性化に携わる。現在は滋賀県甲賀市の特区プロジェクト委員、星野リゾートの宿泊施設のコンセプト・メイキングを担うほか、慶應義塾大学で「パブリック・リレーションズ戦略」、首都大学東京で「コンセプト・メイキング」を教える。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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