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お盆とお祭りから考える地域プロデュースのとば口

移住、地域活性化……地域の価値観を共有できるか、試されているかもしれません

南雲朋美 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

島で審判を受けたあの夜

 前職である星野リゾートの広報担当時代、前述した竹富島にリゾートホテルをオープンすることになり、密着取材の対応をするために島に3週間ほど滞在したことがありました。

 ある晩、ディレクターと夕食を食べていたら、島で文化的な活動をしている若い男性が、私を訪ねてきました。私を見つけると、私にではなく、ディレクターに向かって、こう言いました。

 「すみませんが、南雲さんをお借りしてもいいですか?お話ししたいことがあるのです」

 当時、島にはリゾート施設の建設に反対する外部圧力もあり、若干のピリピリモードがありました。その人は反対者ではなく、歓迎してくれていた人でしたが、ここにきて、何か気になることでもあり、怒られるのかもしれないと、不安に思いました。しかし、断れる感じではなかったので、ディレクターに「1時間で戻らなければ探しに来てください」と耳打ちをして席を外しました。

地域プロデュース拡大竹富島には、80を超える神様を祀る場所「御嶽(うたき)」があり、島民はその前を通る時に挨拶をする=南雲さん提供

企業広報の枠を超えて地域を担う

 真っ暗な森の中で唯一光っているのは月と足元の白砂だけ。足元を見ていないと歩けないほどの暗闇の中を彼と歩きながら話をしたのは、私の価値観についてでした。

 彼は私に二つの質問をしました。

 一つ目は、暗闇をどう思うか?

 もう一つは、神さまはいると思うか?

 私の考えをお話ししたところ、合格点をもらえたようで、うなずきながら最後にこう言われました。

 「あなたは企業の宣伝をする広報ですが、これからは島の広報もすることになります。分からないことがあれば、何でも聞いてください。島のために一緒に頑張ってください」

 その時つくづく思ったのは、地域で仕事をするということは、企業人という枠を超えて地域経済の一端を担う役割があるということです。怒られるのではないかと、びくびくしていた自分が恥ずかしくなり、背筋を正した瞬間でした。それから、広報という仕事を通して、自社のことだけではなく、地域のことも一緒に考えるようになりました。

地域プロデュース拡大「種取祭」には、島外からも多くの観光客が訪れる。島民400人弱に対して、その数は約2000人と言われ、島最大の祭りだ=南雲さん提供

 日本は狭いようでも多様な価値観があります。南北で育つ作物は異なりますし、海沿いか山間かといった異なる環境下で生活をしていれば当然のことでしょう。

 その土地を訪れて、視覚だけではなく、嗅覚や聴覚などで実感することは論理を超えた理解が得られると思います。

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筆者

南雲朋美

南雲朋美(なぐも・ともみ) 地域ビジネスプロデューサー 慶應義塾大学・首都大学東京非常勤講師

1969年、広島県生まれ。「ヒューレット・パッカード」の日本法人で業務企画とマーケティングに携わる。34歳で退社後、慶應義塾大学総合政策学部に入学し、在学中に書いた論文「10年後の日本の広告を考える」で電通広告論文賞を受賞。卒業後は星野リゾートで広報とブランディングを約8年間担う。2014年に退職後、地域ビジネスのプロデューサーとして、有田焼の窯元の経営再生やブランディング、肥前吉田焼の産地活性化に携わる。現在は滋賀県甲賀市の特区プロジェクト委員、星野リゾートの宿泊施設のコンセプト・メイキングを担うほか、慶應義塾大学で「パブリック・リレーションズ戦略」、首都大学東京で「コンセプト・メイキング」を教える。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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