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厳しい人口減少時代 「令和モデル」転換で突破を

柔軟な働き方をしても「損をしない」 こんな社会環境を整えてみませんか?

竹本治 神奈川県政策研究担当局長 兼 政策研究センター所長

令和経済(上)拡大GaudiLab/shutterstock.com

 改元に伴う祝賀ムードから数カ月が経過したが、令和の時代には日本はどのような社会になるのだろうか――。当然のことだが、新たな時代を迎えたからといって、日本の直面する課題が自然に解決するわけではない。むしろ、今後は人口減少問題が一段と深刻化することは確実だ。その中で、日本社会はこれからどのように対処していくべきか、筆者なりに考え方を整理してみたい。

ポイント

新しい日本型雇用システム-「令和モデル」-の構築

 生産年齢人口が減り続ける中では、労働力不足の改善と生産性の向上を図ることが必要であるが、そのためには、日本型雇用システム(「昭和モデル」)を抜本的に改革し、「柔軟な働き方をしても、『損をしない』社会」(「令和モデル」)を早く構築すべきである。そうした「令和モデル」の実現により、少子化にもブレーキを掛けることができる。

総人口は2011年から減少を続けている

 まず、最近のデータなどから、我が国の人口減少の状況について概観してみよう。厚生労働省『人口動態統計』に基づくと、日本の総人口は、2011年以来減少傾向が続いており、ここ1年では31万人も減少した。このように人口が減少してきている主因は、自然増減(=出生数-死亡数)が減少に転じていて、その自然減の規模が拡大してきていることだ(下図)。

令和経済(上)拡大

 2018年中の人口減少についてやや詳しくみると、まず、合計特殊出生率は3年連続低下して1.42となり、出生数も92万人弱と過去最低を更新した。一方、高齢化に伴って死亡数は増え続けていることから、自然減は、2018年には44万人を超える規模にまで膨らんだ。また、生産年齢人口は、総人口の減少以上のスピードで減っていて、この1年間では50万人も減少した。

人口減少は向こう数十年にわたって続く

 今後の日本の人口をみると、外国からの移住などに伴う社会増は若干期待できるとしても、全体としては減少傾向が向こう数十年にわたって続くことが見込まれている。

 出生率が今のような低い水準で続くことはかなり深刻だ。仮に、我が国の合計特殊出生率が現在の水準(1.4程度)のまま続くと、計算上、一世代後に生まれる子どもの数は親世代の約3分の2、孫の世代には約半分になってしまう。

 また、出生率が大幅に上がったとしても、人口減少はすぐには解決しない。例えば、来年にも、合計特殊出生率が奇跡的に2.0近辺にまで回復したとしても、日本全体で人口減少が止まって自然増が実現するまでには、どんなに急いでも数十年はかかる。そして、生産年齢人口も、相当長い年月にわたって減っていくことが見込まれている。

 このように、我々は「長く、厳しい時代」の入り口にある。

 こうしたことから、令和日本では、まずは、生産年齢人口が減少する中でも、なんとか経済規模を維持できるように工夫していく必要がある。そして、抜本的には、一日でも早く少子化を克服して、自然増を実現する道筋をつけていくことも求められている。この二つを「同時に」そして「かなり急いで」進めなくてはならないのである。

 後者(少子化の克服、自然増の実現)については、後編(後日配信)で触れることとし、まずは、生産年齢人口の減少への対策について考えていきたい。

令和経済(上)拡大soi7studio/shutterstock.com


筆者

竹本治

竹本治(たけもと・おさむ) 神奈川県政策研究担当局長 兼 政策研究センター所長

1985年日本銀行に入行し、産業調査や金融機関の経営分析等に従事。この間、2002年より2004年までワシントン事務所長。2013年より神奈川県庁勤務。2014年以降、現在に至るまで政策研究センター(県庁の調査部署)の所長をつとめる。東京大学法学部卒、プリンストン大学大学院修士(MPA)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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