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世界経済の成長率が鈍化している!

中国もインドも成長に陰り。その要因は世界に広がる保護主義だ

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

MaxxiGo/Shutterstock.com

頼みの中国も鈍化

 国際通貨基金(IMF)の最新の「世界経済見通し」(2019年7月23日発表)によれば世界経済全体の成長率は2018年の3.6%から2019年には3.2%に鈍化するとされている。

 先進国全体の成長率は2.2%から1.9%に下がり、アメリカは0.3%(2.9%→2.6%)、ユーロ圏は0.6%(1.9%→1.3%)、成長率を低下させるという予測だ。日本の成長率は2018年0.8%、2019年0.9%と予測されている。

 新興市場国も全体として0.4%成長率が鈍化(4.5%→4.1%)、特に中国は2019年6.3%まで成長率を下げるというのだ。

 周知のように、中国は1980年から2010年の30年間、年平均10%弱の成長率を達成してきた。それが、2012年には7%台に(7.90%)、2015年には6%台まで下り、2019年にはIMFの予測によると6.27%まで成長率が鈍化するとされているのだ。

 中国の人口は1980年以来増加し続けてきたが(1980年9億8705万人、2017年13億9008万人)2018年には13億8600万人と70年ぶりに減少に転じている。国連経済社会局人口部の予測によると2050年には13億6000万人まで減少するという。

 中国は、長いこと一人っ子政策をとっていたこともあり、日本と同様に、人口減少・老齢化進展の局面に入ってきたということなのだ。

 イギリスのコンサルティング・ファーム、プライスウォーターハウス・クーパーズ(PwC)の予測によると、2016~2050年の中国の実質GDPの年平均成長率は3.4%まで低下するとされている。それでも先進国と比べると3.4%は決して低くない。(この間のアメリカの年平均成長率は2.4%、日本のそれは1.4%と予測されている。)

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急成長のインドにも陰り

 中国が次第に成長率を下げていく中で、インドは逆に成長率を上昇させてきている。

 1980~2010年平均成長率は中国よりかなり低く6%を切っていたが、2015年には中国を抜いて8.00%(中国は2015年6.90%)とし、その後、7%~8%の成長率を維持している。

 PwCの予測によると、2016~2050年のインドの年平均成長率は4.9%と中国の3.4%をかなり上回っている。こうした高成長を継続することによって、インドは2040年前後にGDPでアメリカを抜き、2050年には中国に次ぐGDP大国になると予測されている。

 PwCによると2050年のPPPベースのGDPのトップは中国で58兆4990億米ドル、次がインドで44兆1280億ドルとされ、アメリカはインドに抜かれ3位の34兆1020億ドルとされている。ちなみに、日本はナンバー8で6兆7790億米ドルとの予測だ。

 かつては、中国とインドが世界の2大経済大国だった。イギリスの経済史の専門家、アンガス・マディソンの推計によると、1820年には中国のGDPは世界の28.7%、インドのそれは16.0%と中国とインドだけで世界のGDPのほぼ半分を占めていたのだ。(アンガス・マディソン著・金森久雄監訳、「世界経済の成長史・1820~1992年」東洋経済新報社・2000年)

 中国とインドが没落したのは19世紀半ばから、欧米によるアジアの植民地化によってだった。それが第二次世界大戦後、次々と独立し、再び世界経済の中心が次第にアジアに戻ってきたのだ。いわゆる「リオリエント現象」が起こっていったのだった。

 1979年から2008年の30年間、年平均経済成長率のトップ10はすべてアジアの国々だった。中国がトップで9.8%それにシンガポール(7.0%)、ベトナム(6.6%)。ミャンマー(6.4%)等が続いてインドはナンバー10で5.8%だった。

 そして、前述したように、インドはこのところ成長率を急速に高め、大国の中では最も高い成長率を達成するようになってきているのだ。

 しかし、そのインドもこのところ成長率を鈍化させてきている。前述したIMFの最新の「世界経済見通し」によると、2018年のインドの成長率は6.8%、2019年は7.0%と予測されているのだ。この予測は前回4月の見通しより0.3%下方修正されている。

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