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線虫の嗅覚でガン発見、カイコガの嗅覚で麻薬発見

生物の驚きの知恵が地球を救う! 自然に学ぶ技術開発

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

 生物の能力を医療やモノ作りに生かす研究開発が熱を帯びている。

 体長1ミリの線虫が持つ嗅覚を利用し、1滴の尿でがんのリスクを判定する技術が、2020年1月から実用化される。

 フェロモンを追うカイコガを利用して違法薬物や化学物質を探知する技術は「センサ昆虫」として登場している。

 ともに長い進化の過程で身に付けた生物の優れた能力を活用する。高額な検査機器に比べてはるかに安く、消費する資源やエネルギーは少ない。しかも高効率だ。

 生物の活用はSDGs(持続可能な開発目標)にも適うため、自然に学ぶ専門部署を設ける企業が増えている。

拡大体長1ミリの線虫=HIROTSUバイオサイエンス提供

線虫の化学走性を利用し15種類のがんを検知

 線虫を使うがん診断技術を実用化したのは、大学研究者だった広津崇亮氏が設立したベンチャー企業の(株)HIROTSUバイオサイエンスである。

 線虫は土の中に生息し、大腸菌を食べて繁殖する。目や耳がない代わりに嗅覚が発達しており、1200種類もの嗅覚受容体遺伝子(犬は800種類)を持っている。

 広津氏は、線虫ががん患者の尿の匂いに強く誘引され、健康な人の尿からは遠ざかる性質(化学走性)を持っていることを発見。全国の大学や病院と協力して、がんの有無を調べる1次スクリーニング用の検査キット「N-NOSE」を開発した。

 検査できるがんは、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、すい臓がん、前立腺がん、子宮がん、食道がんなど15種類。

 広津氏は「1滴の尿で全身のがんを一度に検査できる。検査精度は85%と高く、ステージ0や1の早期がんも発見できる。線虫は1匹が300個の卵を産むため飼育コストが非常に低く、人工の機器を使う他の検査法に比べて安価。集団検診にも適している」と言う。

 次の課題は、がんの種類を特定する2次スクリーニングである。遺伝子組み換えによりがん種別に反応する線虫を使う検査法を開発中で、2022年に実用化したいという。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

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