人気が高い日本のテーマパーク。中国人をひきつけるためにできることはまだまだある
2019年09月13日
2006年に北京でネットマーケティング会社を創業、日中間のインバウンドや越境販売支援に携わっています。実感するのは、日本の観光や商品についての情報がまだまだ中国側に届いていないこと。14億の人口を抱える隣国と共に発展し、元気にしあえる関係をどうやって築くか、皆さまのお役に立つ情報発信ができればと考えています。今回は、中国人に人気が高い日本のテーマパークを取り上げます。中国人を引きつけるためにできることは、まだまだあるようです。
今年7月23日に東京ディズニーシーで2年ぶりとなる新アトラクション「ソアリン・ファンタスティック・フライト」がオープンした。映像で世界の名所を空中散歩しているかのような体験ができる大型アトラクションで、オープン当日には、待ち時間が6時間弱にもなるなど話題となった。
「ソアリン」はもともとアメリカ・カリフォルニアのディズニーランドで2001年にリリースされ、2016年には上海ディズニーランドでも、開園と共にオープンしている。中国には、上海の他にも2005年にオープンした香港ディズニーランドがあるが、それでも東京ディズニーリゾート(以下、TDR)に来園する中国人観光客は年々、増加している。
中国のSNSであるWeibo、WeChat、RED(小紅書)、Douyin(海外版=TikTok)などでも、TDRに行った感想の書き込みがよく見られる。TDRを運営するオリエンタルランド社からは国別のデータは公表されてはいないものの、2014年に5%だった来客者の外国人比率は、2018年には10%に迫るまでになっており、1年間に300万人以上の外国人が来園していることが分かる。
以前は、中国人観光客による日本での「爆買い」がニュースに登場することが多かった。それが、2019年1月から施行された「EC法」の影響で空港での取り締まりが厳しくなったこともあり、「モノ消費」から「コト消費」へと変化してきている。つまり、消費が体験型、いわゆる「爆体験」へとトレンドが移行してきているのだ。
ここで、中国人のキーワードとなっているのが「深度遊」、言い換えれば「テーマ深堀り型」の旅行だ。
旅行者が関心を持つテーマにそう美術館や博物館を訪れるのはもちろんだが、日本が誇るカルチャーであるアニメの舞台をめぐる「聖地巡礼」もそのひとつだ。中国では映画に対する規制もあり、「となりのトトロ」は昨年、「千と千尋」は今年上映された。もちろん、それよりずっと以前に動画サイトやDVD等で見ていた人たちが多かったのだが、改めて脚光を浴びる格好となっている。
「三鷹の森ジブリ美術館」や今年3月に埼玉県でオープンした「ムーミンバレーパーク」など、アニメ作品をテーマとしたアミューズメントパークは当然、「深度遊」の対象となる。もちろん、「ハリーポッター」や「進撃の巨人」、「エヴァンゲリオン」などの強力なコンテンツを提供する「ユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)」が人気スポットとなっていることは言わずもがなだ。USJは来園者の外国人比率もTDRを超える約13%となっており、海外のSNS上でも多くの口コミ情報があふれている。
このようにインバウンド好調な日本ではあるが、テーマパークの現状をみるに、インバウンド対策に対して課題なしとは言えない。
第一に言語だ。アトラクションやショーのアナウンスが日本語しかない場合が少なくない。その点、上海ディズニーランドでは、ショーやパレードのアナウンスは基本的に中国語・英語の2か国語で行われている。香港ディズニーランドの場合は、それに広東語が加わるアトラクションも存在する。
日本のテーマパークでも、せめて英語や中国語、あるいは同時通訳機や翻訳アプリを活用できるようにすると、外国からきた来園者たちもそれぞれの世界観に基づき、アトラクションにより没入することができ、満足度が一段階上がるに違いない。
第二に時間だ。テーマパークに行くと、「一日がかり」になってしまうというイメージは強く、3泊4日や4泊5日で訪日する観光客にとっては、どうしてもハードルが高くなってしまいがち。例えば「アフター5パス」や、「トワイライトパス」といった夕方から入場できるチケットもあることを、積極的に周知するようにすると、ハードルも随分下がるのではないか。
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