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公的年金について若者に最低限知って欲しいこと

日本の公的年金のリアルな姿を知ろう

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

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国民年金はそんな悪くない?

 これに対して、正社員のサラリーマンではない、自営業などの場合(国民年金の場合)は、自分で毎月定額の保険料を支払う。ざっくりいうと会社負担分がないのだ。そのため、保険料総額は768万円(1万6000円×12カ月×40年間)にすぎない。月額の年金額が3倍以上違うのは支払った保険料総額が違うからだ。

 国民年金については年金額が少なく、東京などの都市部ではとても生活できないと不満の声がよく上がる。ただ、支払った保険料総額が正社員サラリーマンに比べ圧倒的に少ないのだから、それは仕方がない。だからこそ、国は少ない保険料を上乗せする国民年金基金制度やiDeCo(イデコ)など厚生年金に比べると金額が劣る国民年金を補完する手段をいくつも用意している。これらの制度に掛け金を拠出すれば、税金を低くすることもできる。本人の自助努力で年金額を増やすことも可能なのだ。

 確かに、世帯を養う大人からすれば、毎月5万円では住居費にもならないと経験上知っている。

 しかし、大学生の立場に立つと、5万円という金額はそんなに悪くないのだ。都内のある女子大生は「国民年金は一切働かないで、死ぬまで5万円もらえるなら、そんな悪くないのでは」という。例えば、アルバイトなどで、時給1000円で毎月5万円の収入を得るためには、自分の時間を約50時間は犠牲にしなくてはならないからだ。

 もちろん、彼女も大学生の金銭感覚だからこう思うのだろう。社会人になって自分で給与を得るようになったら、この考え方は変わるかもしれない。

天引き保険料はどこへ?

 彼女が大学を卒業し、就職すると毎月給与をもらう。保険料算定の基礎となる保険料率は同じだが、給与や賞与の金額によって毎月の年金保険料は変わる。給与などは年金保険料や税金などを天引きされた後の金額が銀行などに振り込まれる。もっとも、天引きされた保険料は給与明細などで基本的には確認できる。

 保険料負担の仕組みについて公的年金制度の本質を問う質問では、具体的なケースを設定。仮に毎月の給与が22万円だったとすると、定率の18.3%(本人負担分9.15%+会社負担9.15%)の保険料率をかけると、毎月の保険料は4万260円と計算できる。このうち、本人負担は半分の2万130円が給与から天引きされている。このうち、一体いくらが自分の年金に積み立てられるかを尋ねた。

 もっとも、会社は残り半分の保険料を別途負担しているが、給与明細には記載されない。筆者が正社員を辞めた2017年7月の給与明細をみると、厚生年金保険料は「5万6364円」と記載されている。会社も同額の保険料を負担していると考えると、毎月約11万の保険料が支払われている計算だ。

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1円も自分の年金には積み立てられない現実

 大学生の回答結果をみると、回答は大きくばらけた。最も多かったのは「1万0065円(保険料の50%)」で全体の37.1%、次いで多かったのは「5032円(保険料の25%)」で35.8%だった。

 日本の公的年金制度は仕送り制度で、現役世代が毎年支払った保険料に加え、国が税金などと合わせて、今の受給者に年金を給付する仕組みとなっている。自分の支払った保険料はそのまま受給者の年金になり、自分の年金給付には1円も積み立てられない。これが現実だ。

 ゆえに正解の「0円(保険料の0%)」を選べたのは、全体の13.4%に過ぎなかった。もちろん、現役時代に支払った保険料の総額は日本年金機構で一元管理され、支払った保険料総額によって将来もらう年金額が決まるので、ご安心あれ。

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。著書に『点検ガバナンス大改革―年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値』(R&I編集部編共著、日本経済新聞出版社)などがある。17年7月退社。

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