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公的年金について若者に最低限知って欲しいこと

日本の公的年金のリアルな姿を知ろう

深沢道広 経済・金融ジャーナリスト

保険料を何年支払えば年金もらえる?

 一方、学生の理解が進んでいるとみられ、多くの学生が正解を選んだ項目もある。例えば、年金の支給開始が始まる年齢については、「原則65歳」とする回答が全体の65.3%と比較的理解されていた。

 「原則65歳」とあるのは、現在は60歳から70歳の間でいつから年金をもらうかを本人が選択する仕組みだからだ。60歳を過ぎても働く人が増えるなど、働き方が多様化していることから、本人が年金の受給開始年齢を選べるようにしているのだ。

 65歳より前にもらい始めると、減額され、65歳より後にもらい始めると、増額される。ちなみにどっちを選んでも基本的に不公平とならないよう調整されている。政府はこの選択肢を75歳まで拡大する方向で検討している。

 これに対して、回答がばらけたのは、年金の受給に必要な期間だ。「20年以上」とする回答が29.1%で、正解の「10年以上」とする回答を上回った。従来は年金の受給には「25年以上」の保険料の支払いが必要だったが、国は要件を緩和した。保険料を10~24年11カ月保険料を支払った人にも年金給付の道を開いた。

 もっとも、10年保険料を支払えば年金をもらうことができるようになったが、保険料の支払期間が短くなっていることから、支払う保険料総額は当然少なくなる。このため、10年保険料を支払った人がもらえる年金額は25年保険料を払った人より少なくなる。

マクロはほとんど知らない

 このほか、マクロでみた日本全体の年金のリアルな実態についても、回答結果はばらけた。例えば、公的年金の支え手となる現役世代と年金をもらう受給者の関係を問う質問では、正解の「4000万人」との回答は24.1%にとどまった。

 厚労省の「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、2013年度末から2017年度末までは重複のない実年金受給権者数は3950万~4077万人と増加基調で推移している。このうち、約3500万人が会社員の厚生年金で、残り475万人が公務員など。約6700万人の現役世代が約4000万人の年金受給者を支えている。これが日本の公的年金のリアルな姿だ。

 国が公的年金の支払い(保険料+税負担)のために、毎年どのくらいのお金が投じられているかを問う質問では、正解の「約60兆円」を選んだのはわずか8.1%にとどまった。

 国立社会保障・人口問題研究所の統計によると、2015年度の社会保障給付費用(年金、医療、介護など)の総額は114.9兆円。このうち、年金は54.9兆円と社会保障給付費用全体の47.8%だった。

 2018年度は総額が121.3兆円となり、年金は56.7兆円と拡大した。内訳をみると、36兆円は現役世代が支払った年金保険料、残りが国の負担する税などだ。しかし、社会保障給付費用に占める割合は46.7%と低下した。医療や介護などの伸びの方が大きいからだ。

 国は莫大な年金給付の支払いのために、保険料と税負担に加え、公的年金の積立金を保有している。厚労省傘下の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が積立金を国内外の株式や債券などで運用している。アンケートで積立金規模について、正解の「約150兆円」を選んだのは28.7%にとどまった。

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筆者

深沢道広

深沢道広(ふかさわ・みちひろ) 経済・金融ジャーナリスト

1978年生まれ。慶応大学商学部卒業後、編集者として勤務。05年青学大院経営学研究科会計学専攻博士前期課程修了。格付投資情報センター(R&I)入社。R&I年金情報、日本経済新聞の記者として勤務。12年のAIJ投資顧問による2000億円の巨額年金詐欺事件に係る一連の報道に関与し、日経新聞社長賞を受賞。著書に『点検ガバナンス大改革―年金・機関投資家が問う、ニッポンの企業価値』(R&I編集部編共著、日本経済新聞出版社)などがある。17年7月退社。

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