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ジョンソンもマクロンも望むブレグジットの結末

英国は脇役。EUから見なければブレグジットの行方は見通せない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

拡大マクロン仏大統領夫妻の出迎えを受けるジョンソン英首相(中央)=2019年8月24日、フランス・ビアリッツ

ジョンソン英首相はEUと交渉しているポーズだけ

 9月7日に労働・年金大臣を辞任したラッド下院議員が暴露したように、ジョンソン首相はEUと正式な交渉は一切していない。

 アイルランドのバラッカー首相は9日、ジョンソン首相がバックストップの修正を求めているにもかかわらず、ジョンソン首相から国境管理をしなくても済む現実的な代替案の提案は行われていないことを明らかにした(以上11日付け朝日新聞)。

 EUの首都ブリュッセル駐在のブルームバーグ紙の記者によると、イギリスの代表はブリュッセルに来て週二回ほどEUの担当者と会っているが、EUの担当者たちは、「茶番だ」「役に立たない」「単にいるだけ」というコメントしているという(10日付けJapan Times)。

 つまり、ジョンソン首相は、メイ元首相とEUが合意した協定案の修正など不可能だということは百も承知で、EUと交渉をしているというポーズをとっているのである。

 では、離脱延期法が成立したという状況のなかで、ジョンソン首相は何を狙っているのだろうか?

 『合意なきブレグジットは怖いのか』で、「バックストップなしの合意なき離脱によって紛争が起きるとしても、それは北アイルランドを含むイギリス領土内であって、EU域内ではない。(1年程度の延期を主張した)EU大統領のトゥスクを押し切って、(その半分の)10月31日までという短い期限を設定したのはマクロン(フランス大統領)であり、彼は合意なき離脱でも構わない」と述べた。

 EUがイギリスの離脱延期要請について唯一受け入れられる条件は、メイ元首相とEUが合意した協定案のイギリス議会承認の確約である。しかし、保守党も労働党もそんな約束はできないし、議会は過去3度も否決している。ジョンソン首相が離脱延期法案に賛成した造反者21名を保守党から除名し、さらに離脱者も増えたことから、与党自体下院の過半数を失ってしまっている。国民投票を約束したとしても、また離脱が多数となれば、泥沼が繰り返されるだけである。

 EUとしては、そんなことに付き合うつもりはない。

 EUの意思決定は全加盟国の一致が必要となる。いまやEUのリーダー的な存在となっているマクロンが反対する限り、いくらイギリスが離脱延期をEUに要請したとしても、EUは拒否する。

 メルケル・ドイツ首相もメイ元首相には同情したが、反EUを標榜するジョンソンには助け舟を出さないだろう。また、求心力の低下したメルケルは、もうマクロンを抑えられない。

 これこそジョンソン首相が狙っていることではないのか?

 イギリス議会が議決した法律通り離脱延期をEUに要請する。しかし、EUは認めない。自動的に、10月末にイギリスはEUから離脱する。もちろん、バックストップなしの合意なき離脱である。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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