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米中貿易摩擦は終わらない

引くに引けないトランプと強気の習近平

榊原英資 (財)インド経済研究所理事長、エコノミスト

トランプ米大統領(奥)と握手を交わす中国の習近平国家主席=2019年6月28日、大阪市住之江区

米中我慢比べ

 アメリカのトランプ大統領は8月末に1120億ドル分の中国製品に15%の関税を上乗せする計画を実行し、米中貿易戦争のリスクをさらに高めた。

 これに対し、中国は世界貿易機関(WTO)に提訴すると発表した。米中は9月初めにワシントンで閣僚級の貿易協議を予定していたが、実現はさらに不透明になってきている。

 中国商務省報道官は声明で「米国の追加関税は(6月末の)大阪での米中首脳会議での合意に著しく反し、中国は強烈な不満と断固たる反対を表明する」と指摘した。

 首脳会議でトランプ大統領は「当面は追加関税をかけない」と約束したが、7月末の上海での協議が不調に終わると、3000億ドル分の中国製品を対象にした制裁関税「第4弾」を課す方針を決めた。このうち9月1日に発動したのは1100億ドル分だ。

 今回の中国のWTO提訴はアメリカがWTOを軸とする多角的貿易体制を軽視する一方、中国はWTO体制を重視すると国際社会に印象付ける狙いがある。

 中国はすでに大半の米国製品に追加関税をかけており、報復措置が限られていることも背景にある。中国は2018年9月にもWTOにアメリカを提訴している。

 米中が9月初めに予定した協議は、前述したように、その実現が危ぶまれ、中国商務省の高峰報道官は8月末の記者会見で、新たな追加関税措置を取り消すことが協議再開の条件になるとの考えを示唆している。

 トランプ米政権は9月1日、中国製の家電・衣類品などへの制裁関税「第4弾」を発動した。中国も米国産の農作物などを対象に報復措置をとり、米中貿易戦争は泥沼化し米中我慢比べの様相に呈している。

再選へ妥協できないトランプ

 トランプ大統領は来年、2020年11月~12月に大統領選挙をむかえる。

 再選されれば2期目となるのだが、前任者のバラック・オバマ(2009~2017年)もジョージ・W・ブッシュ(2001~2009年)も再選を果たしている。現職大統領は余程の失敗がない限りは強いという事なのだが、ジミー・カーター(1977~81年)や、ジョージ・W・ブッシュ(1989~1993年)は1期で終わっている。いずれの場合も民主党から共和党、共和党から民主党への政権交代があった時だ。

 2020年の大統領選挙の焦点は民主党から誰が出てくるかなのだろう。かつてバラク・オバマのように本命のヒラリー・クリントンを破り、浮上してくる候補がいるのかどうか。

 現在の世論調査ではジョー・バイデン(第47代副大統領)、バニー・サンダース(バーモント州選出上院議員)がトップを走っているが、選挙直前になって、かつてのバラク・オバマのようにトップに躍り出てくる候補が出るのかもしれない。テキサス州の元下院議員ベト・オルーク等が飛び出してくる可能性もあるのだろう。

 ただ、現職大統領は強い。前述したように2期連続大統領を務めるのが、ここ二十数年は通常のパターンになっている。1993年以来、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマはいずれも2期8年大統領を務めている。

 ただ1993年以来、民主党のビル・クリントン、共和党のジョージ・W・ブッシュ、そして民主党のバラク・オバマ、共和党のドナルド・トランプと民主党と共和党が交互に大統領についている。まさに、アメリカでは二大政党制が定着しているということなのだろう。

 ドナルド・トランプ大統領も、当然、2期目の当選を目指している。そして、対中強硬姿勢をとることがそのためにも有利だと考えているのだろう。下手な妥協をすれば、民主党の対立候補に攻撃され、国民の支持を失いかねないと思っていても不思議ではない。

 とすれば、アメリカ側から妥協する可能性は低いということなのだろう。

強気の習近平体制

 アメリカの輸入総額は2017年には2兆3420億ドルだった。最もシェアが大きいのが中国で21.6%、これにメキシコ(13.4%)、カナダ(12.8%)、日本(5.8%)、ドイツ(5.0%)が続く。逆に輸出では中国は8.4%とカナダ(12.3%)、メキシコ(15.7%)に続くナンバー3になっている。

 たしかに、中国製品に対する追加関税は中国にとっては痛手だが、中国国内では、中国はアメリカの圧力に耐えるパワーがあるとの見方が多数を占めているという。

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