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リブラの真の敵は米ドルではなくデジタル人民元だ

米欧の反対強くてもデジタル通貨の潮流は変わらない

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

ビットコインの失敗に学んだリブラの仕組み

 リブラとはどのような特徴を持つのだろうか。現時点ではおよそ以下の点が明らかになっている。

拡大リブラ協会を構成する29社の企業群=リブラ協会のHPより

 リブラは米ドルやユーロ、円などの主要通貨で構成する通貨バスケットにリンクしている。我々がドルなどでリブラを買うと、そのお金は準備高(リザーブ)の中に入り、国債や金などで運用される。これが価値の裏付けとなり、リブラは安定した通貨になる。

 これが、ビットコインなど裏付けのない仮想通貨と最も異なる点だ。ビットコインが投機の対象とされて乱高下を繰り返した失敗に学んでいる。

 リブラを運営するのは、FB子会社の「キャリブラ」を中心に、VISAカード、マスターカード、ペイパル、ウーバーなどのカード会社や大手IT企業29社が参加する「リブラ協会」(本部スイス)である。既存の金融システムを担っている民間銀行は当然、1行も入っていない。

 リブラの管理方式はブロックチェーン(分散型台帳技術)である。中央管理者を置かず、利用者同士が取引情報を共有するシステムだ。相互に監視するので不正取引や改ざんが困難になる。システムダウンに強く、運用コストは安い。

 リブラを買う人は、政府発行のID(マイナンバーカードなど)で本人確認する。リブラ協会は「マネーロンダリングなど怪しい取引は追跡・排除される」と言う。

銀行経由に比べ、格段に安い国際送金の手数料

 手数料が安くて価値が安定したリブラは先進国・途上国の別なく、主要通貨より広範に使われる可能性がある。いま国境を超える送金手数料は世界平均で約7%、しかも日数がかかるが、リブラなら極めて安く瞬時にできる。

 筆者は3年前、スペインの企業から約50ユーロの送金を受けた際の苦い経験を思い出す。スペインの銀行経由で筆者の銀行口座に振り込まれた金額(日本円)は、なんと50ユーロの7割にも満たなかった。50ユーロの中から送金手数料、中継銀行手数料、受取銀行手数料、為替手数料などが差し引かれたからである。

 既成の金融システムの利権構造を見た思いがしたが、もしリブラで送受金できていれば、50ユーロに近い金額を受けとれたはずだ。この欠点を知るECBは、リブラへの規制と同時に決済システムの改善を銀行に要求した。

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筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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