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あなたも「ワインツーリズム」学んでみませんか?

全国へ広がりを見せる「ワインツーリズム」。キーマンが語る地域ビジネスの興し方

大木貴之 LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

拡大大木貴之さん提供

 「山梨といえばワイン」というイメージをお持ちの方ならば、山梨県民は日常的に地元のワインをよく飲み、たくさんの方がワインを求めて来県するのが当たり前だと思われているでしょう。特に、ぶどうの収穫やワインの醸造が行われる今の時期であれば多くの来県者がワインを求め、ワイナリーをめぐり、ワイン三昧な週末を楽しむ……。

 確かにここ数年、山梨ではこうした光景を目にします。山梨県の県庁所在地である甲府駅周辺には、山梨県産ワインを飲める飲食店が立ち並び、ワイナリーが集積する甲州市勝沼では、週末たくさんの人が訪れ、飲食店をはじめ、酒販店、宿泊施設、タクシー会社など地域のお店が潤っています。しかし、ほんの10年程前までこの光景は日常的ではなく、地域の人たちが連携して、こうした新たな人の流れをつくり上げていったということをご存知でしょうか?

拡大大木貴之さん提供

過程を自ら体感して理解を深めてもらう場

 この地域における新たな消費の行動を起こし、定着させるきっかけとなった一つが、私たちが始めた「ワインツーリズム(R)」という民間の活動です。2008年,
地域資源であるワインを活用したイベント「ワインツーリズムやまなし」を官民連携で立ち上げ、ワイナリーや地域住民ら多様なステークホルダーを巻き込みながら10年間、民間運営で持続させてきました。

 これ以前のワイン関連のイベントは、一つの場所にワイナリーが集まり、ワインを飲むことを重視したものでした。またツアーとなると参加者であるゲスト側の満足を追求したものが多く、ツアーに組み込まれない限り、ホスト側となる地域の人たちに大きなメリットとなるものではありませんでした。

 「ワインツーリズムやまなし」は、ワインの試飲に加えて、ワインづくりの現場に足を運ぶ機会を設け、ワインを取り巻く環境や、ワインがボトルに入るまでの過程を自ら体感して理解を深めてもらう場を提供してきました。

拡大大木貴之さん提供

 具体的には、ワインを醸造する人やぶどうを栽培する人たちとの会話、ぶどう畑のある風景とワイン産地の歴史や風土、そして地域の食文化などといった体験です。

 ホスト側である地域住民には、イベントによってワイナリーのある地域に行って楽しむという観光を促すことで地域への人の流れを生みだし、自分たちの生業が持続しやすいような、稼げる地域に変化させていくきっかけづくりをしてきました。

 それでは、なぜこうした活動が始まり、ワインツーリズムとはどのようなイベントで、結果的に地域に何が起こってきたのでしょうか。


筆者

大木貴之

大木貴之(おおき・たかゆき) LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHeartsCafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、ワイナリー、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞)を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する新たな消費行動を提唱。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学しワインツーリズムを研究。卒業後は、山形、岩手と展開。ワインに限らず地場産業をツーリズムとして編集し直し、地域の日常を持続可能にしていく取り組みを続ける。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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