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あなたも「ワインツーリズム」学んでみませんか?

全国へ広がりを見せる「ワインツーリズム」。キーマンが語る地域ビジネスの興し方

大木貴之 LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

場所、サービス、人をたくさん巻き込む

 コンセプトは「至らず尽くさず」。自由度が高く少しわかりにくいですが、その分楽しみ方は多様でワイナリーだけでなく、地域の人たちとのコミュニケーションや、自然、歴史、食なども楽しむ「大人の遠足」です。

 このイベントの特徴は、これまで「産地=ワイナリー」だったものを「産地=ワイナリーのある地域」に再定義することにあります。つまりワイナリーをピンポイントにめぐって終わりではなく、ワイナリーが点在するエリア周辺に存在する既存の「場所、サービス、人」をたくさん巻き込み、イベントを構成していることです。

拡大大木貴之さん提供

地域が稼げる環境へと変化

 例えば、場所でいえば、ワイナリーはもちろん、駅、公園、お寺、JA共選所、博物館、図書館などを使用して、受付、クローク、バス乗り場、飲食・物販会場などを整備します。サービスでいえば、バスやタクシーはもちろん旅館や飲食店、酒販店など地域でふだんから営業しているお店に協力をお願いします。

 人でいえば、地域のまち歩きNPOの主催者にバス停から散策してワイナリーを巡れるコースをつくってもらったり、朝市を自ら立ち上げた人の協力を得て、既存のお店だけではまかないきれないイベント時のフードコートを設置してもらったりしています。地元の農家の方々やボランティアの方々が案内所を設置したり、巡回して道案内をしてくれたりしています。中には名物おじさんになった方もいます。

 こうして地域の日常をイベントに内包することで、イベント以外の日にも同じような体験ができるよう再現性を高め、新たな消費の行動が定着し、地域が稼げる環境へと変化していくことを目的としてプランニングしています。

 現在では、こうした取り組みの効果もあってワイナリーが30軒ほど密集する甲州市勝沼では、10年前およそ9000人だった人口が今では約8000人に減ってしまったものの、ワイナリーを目当てに散策する人が増え、飲食店がこの10年で10店舗以上増えています。

 また甲府駅周辺は2000年ごろには大型店が郊外に出店し、街中の商店街のシャッター街化が進んで、山梨県産ワインを提供しているお店もほんの数軒しかありませんでした。今では、甲府駅周辺のビル1階の空き店舗はほぼなくなり、甲府駅周辺の70店舗以上で山梨県産ワインを提供している状況となっています。

 ワイナリーの変化でいえば、来県者が増えることによって売り上げの向上はもちろん、来県者を迎えるために醸造設備以外への投資や、新規参入ワイナリーの増加、さらには首都圏で働いていたワイナリー経営者の子息らが、イベントを手伝うようになり、その数年後にワイナリーを継ぐために仕事を辞めて山梨に戻ってくることが起きています。

 このような地域の変化は歓迎できますが、過剰なブームを巻き起こし、コントロールを失って地域が疲弊してしまってはなんの意味もありません。あくまでも目的は、地域を次世代につないでいける環境をつくることにあります。

 こうしたことを踏まえて現在「ワインツーリズム」という言葉は、一般社団法人ワインツーリズムの登録商標となっています。これは「ワインツーリズム」という言葉が乱用され、本来の目的とは真逆の格安ツアーなどによって、地域が消費されてしまうことを防ぐという狙いからです。

 もちろん消費は悪ではありません。目的を見失った一過性の加熱した消費が地域を疲弊させます。多くの人を巻き込み、未来に繋げることに消費を活用し、ワイン産地を担う人たちやブドウ畑が育つような地域の時間の流れにあった「ムーブメント」として、産地形成の力にしていきたいと考えています。

拡大大木貴之さん提供

外の人たちの消費やコミュニケーションの力を借りて変化を

 地域に変化を起こしていくというのは、簡単なことではありません。いくつもの家族が代々暮らし、小さなコミュニティが集積した地域には、複雑な利害関係があり、それらを強制的に一つにしようとしても決してうまくはいきません。大切なのは、地域の人たち自らが当事者となって変化を起こしていくことです。

 それには「ワインツーリズムやまなし」で掲げた「理想の産地をつくろう」というような、ざっくりとした未来を思い描き、地域の人たちが自分たちなりのイメージを持つことができて、同じ方向を向ける環境を整えることが重要です。

 地域は急には変わりません。だからこそ地域の現状を内側の人間だけで変えるのではなく、地域外の人たちの消費やコミュニケーションの力を借りて、お互いに楽しみながら、少しずつ小さな成功体験を積み重ねていくことが大切です。地域の人の話を聞き、現状を見て、細心の注意を払いながら、地域の人たちへの利益と、地域全体にかかる公の利益の両方を鑑みながら仕組みをデザインすることで、自然と思い描いた未来へ近づけることができると考えています。

※ワインツーリズムは一般社団法人ワインツーリズムの登録商標です。

拡大大木貴之さん提供

プロフィール

大木貴之(おおき・たかゆき)
LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

拡大大木貴之さん提供
 1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHeartsCafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、ワイナリー、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞)を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する新たな消費行動を提唱。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学しワインツーリズムを研究。卒業後は、山形、岩手と展開。ワインに限らず地場産業をツーリズムとして編集し直し、地域の日常を持続可能にしていく取り組みを続ける。

参加者募集 論座セミナー「キーパーソンから学ぶ地域プロデュース」

拡大
地域が持つ魅力をどう引き出し、経済的な潤いを地域の中でどう循環させていくか――。スモールビジネスからスタートできる、地域ビジネス、地域プロデュースが注目されています。社会環境も、ライフシフト、ダブルワーク、テレワークと変わりつつあります。みなさんの眠っているチカラ、地域で活かしてみませんか?

「論座」では、セミナー「キーパーソンから学ぶ地域プロデュース」を開きます。山梨で「ワインツーリズム(R)」を始めた大木貴之さんと、有田焼の再生や星野リゾートの宿泊施設のプロデュースを行う南雲朋美さんからメソッドを学びましょう。

講師

南雲朋美さん

地域ビジネスプロデューサー、慶應義塾大学・首都大学非常勤講師。1969年、広島県生まれ。「ヒューレット・パッカード」の日本法人で業務企画とマーケティングに携わる。34歳で退社後、慶應義塾大学総合政策学部に入学し、在学中に書いた論文「10年後の日本の広告を考える」で電通広告論文賞を受賞。卒業後は星野リゾートで広報とブランディングを約8年間担う。2014年に退職後、地域ビジネスのプロデューサーとして、有田焼の窯元の経営再生やブランディング、肥前吉田焼の産地活性化に携わる。現在は滋賀県甲賀市の特区プロジェクト委員、星野リゾートの宿泊施設のコンセプト。メイキングを担うほか、慶應義塾大学で「パブリック・リレーションズ戦略」、首都大学東京で「コンセプト・メイキング」を教える。【南雲さんの記事はここから

大木貴之さん

LOCALSTANDARD株式会社代表、一般社団法人ワインツーリズム代表理事。1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHeartsCafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、ワイナリー、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞)を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する新たな消費行動を提唱。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学しワインツーリズムを研究。卒業後は、山形、岩手と展開。ワインに限らず地場産業をツーリズムとして編集し直し、地域の日常を持続可能にしていく取り組みを続ける。【ワインツーリズム山梨のサイトはここから

セミナーの概要

■第1部
南雲朋美さんの講演テーマ「地域の魅力の見つけ方」

地域の魅力を発見する方法とコンセプト化する考え方をお話しします。どんな地域でも、そこに人々が暮らしているのであれば、その経済を支える「何か」があります。それが魅力です。その魅力を人が納得できるコンセプトに昇華しますが、コンセプトはテーマと言ってもいいかもしれません。いずれにしても事業を行う上で、経営の礎(いしずえ)になる重要な概念です。厳しい競争の中で生き残ることができる核となる魅力を見つけましょう。

■第2部
大木貴之さんの講演のテーマ「地域の日常をつないでつくるツーリズム」

地域を使ったコミュニティベースのツーリズムの手法をお話しします。たくさんの人が来ても、その消費が外に漏れてしまっては効果が薄れてしまいます。人が地域のキャパシティを越えてまでたくさん来ればいいというわけでもありません。地域のファンになってもらいリピートしてもらうその仕組みづくりのお話をします。新たな産業をつくるのではなく、既存の産業や地域のイメージを活用し、サービスからの視点で捉え、地域を次世代に繋いでいくヒントになればと思います。

第3部
パネルディスカッション
・南雲朋美さん
・大木貴之さん
・岩崎賢一(ファシリテーター)

※第3部終了後、講師との名刺交換もできます。

開催日時・場所

10月22日(祝日)17時30分~20時30分(17時開場)
朝日新聞東京本社 本館2階読者ホール(地下鉄大江戸線築地市場駅すぐ上)

チケット・定員

参加費 3000円、定員90人。申し込みが定員に達した時点で締め切ります。

申し込み方法

Peatixに設けられた「論座」のイベントページから参加申し込みをお願いします(ここをクリックするとページが開きます

主催

朝日新聞「論座」編集部

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筆者

大木貴之

大木貴之(おおき・たかゆき) LOCALSTANDARD株式会社代表、 一般社団法人ワインツーリズム代表理事

1971年山梨県生まれ。マーケティング・コンサルタント会社を経て地元山梨へ。2000年に当時シャッター街だった山梨県甲府市に「FourHeartsCafe」を創業。この「場」に集まるイラストレーター、デザイナーや、ワイナリー、行政職員、民間による協働で「ワインツーリズムやまなし」(2013年グッドデザイン・地域づくりデザイン賞受賞)を立ち上げ、山梨にワインを飲む文化と、産地を散策する新たな消費行動を提唱。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科に入学しワインツーリズムを研究。卒業後は、山形、岩手と展開。ワインに限らず地場産業をツーリズムとして編集し直し、地域の日常を持続可能にしていく取り組みを続ける。

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