医療費抑制のためには調剤費の削減が不可欠。薬と上手につき合おう!
2019年10月25日
10月から新たな社会保障に充てる財源を確保するため消費税が10%に引き上げられた。子育て世代に対し幼児教育の無償化等を図り、全世代型の社会保障制度へ舵を切る政策だ。
一方、日本の社会保障制度を持続可能にするためには、新たな財源確保とともに、医療、介護、年金の給付額をいかに抑制するかが大きな課題だ。
2018年度の歳出は約98兆円、社会保障関係費は約33兆円(33.7%)だ。そのうちの35.8%に当たる12兆円を医療費が占める。
厚生労働省の「平成28年度 医療費の動向」によると、医療費42.1兆円のうち調剤費が7.6兆円(18.0%)、年齢階級別にみると65歳以上の高齢者医療費が25.2兆円、薬剤費が4.4兆円と、いずれも全体の約6割に上る。
日本は国際的にみても「薬」消費大国だ。医療費抑制のためには調剤費の削減が不可欠だ。ジェネリック医薬品の占率は、2017年には数量ベースで65.8%まで上昇したが、未だに欧米諸国に比べると低い。政府は2020年9月までに使用割合を80%に引き上げることを目標に掲げている。
近頃の医療における臨床検査の発展は素晴らしい。MRI(磁気共鳴画像装置)やCT(コンピュータ断層撮影装置)、内視鏡等の高額の医療機器を使った検査の多くも健康保険が適用され、患者に過大な経済的負担をかけずに受診が可能だ。血液検査では数十項目の異常がチェックでき、その結果、疾病予防や早期治療に大いに役立っている。
2014年、日本人間ドック学会が「検査値の基準範囲」を見直した。誰しも自分の検査値が基準範囲に収まっているかどうか気になるものだ。血液検査をすれば、いくつかの項目が基準範囲から外れることはよくある。それらを改善するために薬が処方され、複数の疾患を抱える高齢者の場合は、対症療法的に多くの薬を服用することになる。
人間は高齢になると代謝機能や排せつ機能が低下し、薬剤が体内に蓄積しやすくなる。高齢者では6種類以上の多剤服用の場合、薬剤の副作用のリスクが1割を超えるという。
患者にとってさまざまな検査が手軽に受けられることは有難いが、その結果、過剰検査や過剰診療、過剰投薬に陥らないように留意すべきだろう。
多額の調剤費の理由のひとつに過剰投薬が指摘されている。
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