福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授
青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒、カーネギー・メロン大学Ph.D.、CFA。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
JR九州は新幹線を自力で維持更新できない。恒久的な税金投入の愚を避けよ
新たな新幹線建設を求める声が各地で大きくなるなか、地元自治体が建設に反対するという、これまでになかった「異常」事態が起きている。すでに整備が決まっている九州新幹線西九州ルート、いわゆる長崎新幹線の建設が佐賀県の反対で前に進まないのだ。
「与党 整備新幹線PT 九州新幹線(西九州ルート)検討委員会」2019年8月に、佐賀県内の新鳥栖-武雄温泉を「フル規格」で整備する方針を決定したのに対し、佐賀県の山口祥義知事は、在来線を使う「スーパー特急」や「フリーゲージトレイン」、「リレー方式」の三つは過去に合意しているとの立場だ。
佐賀県のホームページによると、山口知事は19年1月18日、県の意見として、与党検討委員会の山本幸三委員長との会談で、次のように述べている。
平成34年度(2022年度)の武雄温泉駅での対面乗換方式による開業後の西九州ルートの整備のあり方について、特にフル規格は、財源の問題だけではなく、在来線、ルート、地域振興など複合的な問題があり、受け入れられない。
新幹線は、地域振興と密接に関係するものであり、地元の意思、佐賀県の意見、佐賀県民の意見が十分尊重されるべきものである。
また、報道によれば、山口知事は10月28日に、赤羽一嘉国土交通相と会談し、「フル規格がにじみ出るような議論に応じることは厳しい」と伝えたという。
佐賀県の姿勢に対しては、九州ひいては日本全体では大きな経済効果があるのに、自県へのメリットがないことを理由に反対する地域エゴという見方もあろう。
しかし、以下に示すように、運営主体となるJR九州の現状とその将来を考えると、長崎新幹線は、佐賀県のみならず、建設に積極的な長崎県にとっても、負の遺産となる可能性が大きい。
そもそも、すでに完成し利用されている博多・鹿児島間の鹿児島ルートも建設されるべきではなかったのである。
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