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長崎新幹線はJR九州破綻の始まりだ

JR九州は新幹線を自力で維持更新できない。恒久的な税金投入の愚を避けよ

福井義高 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

予想を裏切ったJR九州の成功

 1987年に国鉄が分割民営化されたとき、建前はともかく本音では、JR北海道・四国・九州のいわゆる三島会社の見通しは暗かった。

 国鉄再建監理委員会の非公開審議の席上、のちにJR東日本の初代社長となる住田正二委員は、「臨調当時、島は切り捨てみたいになるが、せめて本州だけでもなんとかしたいという気持ちがあった。島も援助するとなると大変だ」と発言している。

 国鉄改革は、輸送量の多い本州部分を残すため、三島を損切りする側面を持っていた。

 そのため、「手切れ金」として三島計で1.3兆円の経営安定基金(見合いの資産)が渡され、その利子で鉄道の赤字を補填する仕組みが取られたものの、輸送量のさらなる減少は必至とされ、いずれ立ち行かなくなることは「想定内」であった。

 ところが、三島会社のひとつJR九州は、2016年10月、分割時にはおそらく誰も予想していなかった株式上場を果たした。絵に描いたようなサクセスストーリーである。

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 上の図で示すように、九州の国鉄輸送量は、1975年度の106億人キロから、1984年度には74億人キロまで減少した。分割民営化が決まった1985年の時点では、JR九州の輸送量はこの点線で表わしたとおり減少傾向が続き、1990年度は63億人キロ、2000年度は53億人キロまで落ち込むと予測されていた。

 ところが、分割後、国鉄時代に生かすことができなかった、九州とくに福岡都市圏での鉄道潜在需要を掘り起こした結果、輸送量は反転し、1990年度に80億人キロまで回復。さらに増加した後、その後の不況期も大きく減らすことなく、2011年3月の九州新幹線鹿児島ルート全線開業によって、さらに増加し、2018年度は92億人キロとなっている。

 ただし、それでも1975年度より少なく、国鉄末期より増えたとはいえ、全盛期には及ばない。そのポテンシャルを開花させたといっても、JR九州の現状は楽観を許さない。

 下の図は、JR九州の輸送諸元を他3社と比較したものである。

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 具体的には、JR本州3社の中では相対的に経営基盤が弱いJR西日本、福岡都市圏輸送のライバルである西鉄、そして輸送量がほぼ同じである阪急を選んだ。数値はすべて2018年度のものである。

 JR九州はJR西日本のほぼ半分の2273キロの路線網を持ちながら、旅客運輸収入や輸送量では、その6分の1に過ぎない。これは鉄道輸送における最重要データである輸送密度(1日当たり平均通過人員)が1万1千人で、JR西日本の3分の1しかないことによる。

 大手私鉄との差はさらに大きい。大手16社中、最も輸送密度が低い西鉄と比べても、JR九州はその4分の1で、営業キロでは西鉄の21倍にも達するのに、その輸送量は6倍しかない。

 また、輸送量が同じといっても、阪急の営業キロはJR九州の16分の1に過ぎない。要するに、JR九州の輸送密度は阪急の16分の1である。ただし、新幹線を含む特急利用者のキロ当たり収入単価が高いことを反映して、旅客運輸収入では、阪急の1.6倍となっている。

 こうした諸元の比較で浮かび上がるのは、大手私鉄はもちろんのこと、多くの閑散路線を抱えるJR西日本と比べても、大きく見劣りするJR九州鉄道事業の基盤の弱さである。

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筆者

福井義高

福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授

青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒、カーネギー・メロン大学Ph.D.、CFA。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学大学院国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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