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英国総選挙でも「合意なき離脱」は十分にある

急転直下の英国総選挙。ジョンソン首相率いる保守党が優位との見方が広がるが…

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

保守党への逆風

 しかも、議会解散後、新しい展開がある。

 ブレグジットに反対の勢力については、離脱反対の自由民主党、緑の党、ウェールズ党の三党が選挙協力して、候補者を一本化すると表明した。彼らは残留連合(Remain alliance)と称している。

 今年5月に行われたイングランドと北アイルランドの地方議員選挙では、保守党が1334議席も失う一方、自由民主党は703議席、緑の党は194議席も増加させて躍進した。しかも、自由民主党は、支持率自体は労働党には及ばないものの、最近になって支持率を伸ばしている。

 労働党は、EUとより結びつきの強い離脱協定案を結びなおしたうえで、再度これも含めて国民投票を実施するという提案をしている。離脱、残留という最終目標は違うが、自由民主党、緑の党は、国民投票の実施という点で、労働党と協調・協力することは可能である。

 残留支持の人達が多いスコットランドでは、イギリスからの独立を目指すスコットランド国民党の勢いが増している。スタージョン党首は、どの政党も単独過半数を確保できなかった場合、スコットランド独立を巡る住民投票の再実施を条件として、労働党と協力することを示唆している。

 同じく残留派が多い北アイルランドでは、ジョンソンの離脱協定案が北アイルランドとイギリス本土の間に国境を引くに等しいものであることに対し、イギリス本土との連携を重視するプロテスタント系住民の中にも反発がある。

 10月末の時点とイギリス国内の空気が変化していることがわかるだろう。

 そもそもEUとの協定案を議会に承認させるだけなら、総選挙をする必要は必ずしもなかった。閣僚の中にも、ジョンソンの協定案の大枠については議会で多数の賛成が得られたし、EUが離脱期限を延期したため、協定案の国内実施法案についても今の議会で十分審議する時間はあるとして、総選挙に反対する意見があった。

 ジョンソンがそれを押し切ったのは、多数の議席を確保して政権を長期化しようとする野心からだった。当時から、これは大きなギャンブル(a huge gamble)だと言われた。必ずしも、選挙のプロたちは、ジョンソンの勝利を確信していたわけではなかった。

拡大記者会見する英国のジョンソン首相=2019年10月17日、ブリュッセル

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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