消費増税での内閣支持率は落ちない。1%成長に国民の不満は高くない
2019年11月15日
米国連邦準備理事会(FRB)は10月29~30日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC)でフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50~1.75%に25ベーシスポイント(bp)引下げることを決定した。7月、9月に続く、今年に入って3回目の利下げだった。
ただ、パウエルFRB議長は先行きの金利政策を「適切に見極める」との表現にとどめ、利下げはいったん打ち止めにするとの考えをにじませたのだった。
アメリカ経済は2018年には2.8%の成長率を達成し、2019年も2.4%の成長が見込まれている(IMF「世界経済見通し」2019年10月15日)。2019年はユーロ圏は1.2%、イギリスも1.2%と予測されているので、先進国の中ではアメリカが最も高い成長率を達成するとされている。
IMFは2019年の世界経済の成長率は3.0%とリーマン・ショックの影響を受けた2009年以来、最も低くなると予測しているのだが、アメリカはそこそこ高い成長率を達成するとしているのだ。
トランプ政権は大型減税と公共事業で景気刺激策を講じており、それが効果を発揮し、先進国の中で最も高い成長率をもたらした。金融緩和政策は打ち止めになりつつあるが、財政政策でのてこ入れでアメリカ経済は順調に推移してきている。
他方、ヨーロッパでは10月末にマリオ・ドラギECB総裁が退任、元国際通貨基金(IMF)専務理事のクリスティーヌ・ラガルド氏が総裁に就任している。初の女性総裁だが、欧州委員長もドイツのファン・デア・ライエン氏が就任、EUのトップに2人の女性が就任することになったのだ。また、IMFの専務理事にも世界銀行のCEOで女性のクリスティーヌ・ゲオルギ氏が就任(ブルガリア出身)することが決定されている。
クリスティーヌ・ラガルド氏は弁護士であり、その後転身してフランス財務相等を経験した重量級の政治家。中央銀行業務の経験はないが、IMF専務理事として金融政策には精通していると考えられている。
ECBは2019年9月12日の定例理事会で利下げや量的緩和策を含む包括的な追加金融緩和策の導入を決めている。利下げは2016年3月以来3年半ぶり。FRBに追随する形になった訳だ。
米中貿易戦争の長期化やイギリスのEU離脱をめぐる不透明感が世界経済の先行きに暗い影を落とす中、ユーロ圏の景気と物価は失速気味。ユーロ圏をけん引するドイツは輸出の落ち込みでリセッション入りの可能性が高いため、ECBとしても金融政策による景気のてこ入れが避けられないと判断したのだった。
ドラギ総裁は記者会見で、米中摩擦、イギリスのEU離脱に懸念を示し、「ユーロ圏経済の低迷はより長期化する恐れがある」と警戒感をあらわにしたのだった。
ドラギ氏の後任、クリスティーヌ・ラガルド新総裁は「大胆な金融緩和姿勢が当面必要」とECBの従来からの見解に同意するとともに、「潜在的な副作用にも注視する必要がある」として政策点検にも意欲をにじませた。ECBもまた、そう遅くない時期にFRBと同様利下げを打ち止めにする可能性も少なくないのであろう。
他方、日本銀行は2019年10月30~31日の金融政策決定会合で現状を維持したものの、政策金利の先行き指針(フォワードガイダンス)を修正し、将来の利下げの可能性を声明文で明示した。
黒田東彦日本銀行総裁は、指針修正の理由について「緩和方向をより意識して政策運営をするというスタンスを明確にした」と述べている。追加緩和の伴う副作用を巡っては「政策コストがあるから追加緩和ができないと考えていない」と述べ、金融機関にも目配りした政策を一体で検討する考えを改めて示した。その上で現在のマイナス0.1%の短期金利を「これ以上深堀りできないことはない」と強調したのだ。
FRBやECBに比べると日本銀行は1周遅れで金融緩和に向かおうとしている感がある。
ただ、近い将来で追加緩和が必要なのかどうかについては黒田総裁も必ずしも明確に意識していないのではないだろうか。
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