メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ソフトバンクグループの租税回避から考える

「脱税」と「節税」の中間に位置するグレーな租税回避行為への対策が急務だ

森信茂樹 東京財団政策研究所研究主幹

欧米の租税回避対策

 このようなSBGの取引は、違法である脱税と合法である節税の中間に位置する、グレーな租税回避行為である。

 これに対し、同族会社(今回のSBGやIBM事件など)や組織再編(ヤフー事件など)の場合には、それぞれ個別に税効果を否認できる規定があるのだが、法律上の文言が抽象的(不当に税を軽減する場合)で、その解釈を巡って裁判所の判断も統一されておらず、納税者にとって、経済取引の予見可能性や法的安定性が欠けるという問題が生じている。

 また、りそな銀行事件では、同族会社ではないので、個別否認規定は適用されず、「濫用」ということで否認された。しかしこのような法律上の根拠のない否認は、そもそも憲法に定める租税法律主義に違反するという大きな問題を生じさせている。

 このような取引に対して、わが国を除くG7諸国は、適用要件を明確にした上で、包括的にその取引の税効果を否認できる一般否認規定(GAAR)を導入して、租税回避のけん制も含めた対応をしている。つまり、個別に対応できないような取引をカバーするということである。

拡大中間決算について発表するソフトバンクグループの孫正義会長兼社長=2019年11月6日、東京都中央区

 GAARを導入している各国のアプローチは、大きく分けて、米国型と欧州(大陸法)型の2つがある。

 米国では、その取引に経済実質(economic substance)があるかどうかによりその取引の税務上の効果が判断される。経済実質(経済合理性)のある(経済実質のある)取引かどうかについては、主観的要件と客観的要件という2つの基準が明確化されて判断される。

 一方、欧州諸国のGAARは「法の濫用アプローチ」と呼ばれ、取引が法律の趣旨・目的に反しているかどうかで判断される。欧州司法裁判所(ECJ)は、ハリファックス事件・キャドベリー・シュウェブ事件(いずれも2006年)で、法の濫用アプローチを確立しており、その成果を踏まえたものになっている。

 経済実質がない場合や濫用と判断された取引の税効果は否認されることになる。米国のアプローチと大陸法のアプローチは一見大きな相違があるようだが、「コインの裏表」の論理であるといえよう。

拡大

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

森信茂樹

森信茂樹(もりのぶ・しげき) 東京財団政策研究所研究主幹

1950年生まれ、法学博士(租税法)。京都大学法学部を卒業後、大蔵省入省。1998年主税局総務課長、1999年大阪大学法学研究科教授、2003年東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、2005年財務総合政策研究所長、2006年財務省退官。この間東京大学法学政治学研究科客員教授、コロンビアロースクール客員研究員。06年から中央大学法科大学院教授、(一社)ジャパン・タックス・インスティチュート(japantax.jp)所長。10年から12年まで政府税制調査会特別委員。日本ペンクラブ会員。著書に、『デジタル経済と税』(日本経済新聞出版)『税で日本はよみがえる』(日本経済新聞出版)、『未来を拓くマイナンバー』(中央経済社)『消費税、常識のウソ』(朝日新書)『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)、『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)、『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

森信茂樹の記事

もっと見る