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立憲民主党は「消費税5%」を受け入れられない

立憲民主党の経済政策をつぶさに分析すると、れいわ新選組との根本的違いが見えてくる

与謝野 信 ロスジェネ支援団体「パラダイムシフト」代表

8つの経済政策

 話を立憲の経済政策に戻しましょう。上記の二つの問題(人口減などによる構造的長期停滞と実質賃金の低迷)を解決するために立憲はどのようなアプローチを提案しているのでしょうか?

 まず立憲の考えでは単純な財政・金融政策ではこれらの問題は解決困難であるということです。現行の金融政策に関してはいくら日銀が国債保有量を増やしても日銀当座預金に大量の現金が眠るだけで市中に資金が回らない。財政出動も一時的な景気浮揚効果しかなく、構造的な問題は解決しない。そういう立場のため、問題解決も(金融・財政政策を主要に考える)主流派マクロ経済的なアプローチではなくなります。

 立憲の経済政策集の「ボトムアップ経済ビジョン」では8つの政策が掲げられています。

【賃金・所得を上げるために】
(1)賃金上昇
(2)可処分所得・可処分時間の十分な確保
(3)税制改革で最低限度の所得を確保
(4)(賃金アップと設備投資を誘発する)事業所得の増加
【成長力を強化するために】
(5)イノベーションによる労働生産性を向上
(6)原発ゼロと分散ネットワーク型社会の構築
(7)人口減少時代に適応した都市・インフラ・資産を形成
(8)公正な国際通商関係を発展

 (1)の政策では、実質賃金の上昇は財政出動による景気浮揚を通じて目指すのではなく、労働規制の強化によりミクロ的に賃金の上昇を推し進めます。つまり賃上げを強制的におこなうということなのですが、民間の給与水準を政府が勝手にコントロールできませんので、必然的に規制の対象となる一部のセクターだけになります(例=最低賃金の引き上げ)。

 最低賃金の引き上げに関しては各党異論はほとんど無く、論点は規模と実施スピードの違いです(時事7月10日)。最低賃金を急激かつ大幅に引き上げると低賃金層の失業率が上がり、本末転倒な政策となる危険があります。

 立憲の目指す5年以内で1300円が妥当な水準か?というのは議論の別れるところでしょうが、ここでは立憲の経済政策全般を幅広に分析することを主眼に置いていますので、そこまでの細かい議論は他の分析に譲ります。

(2)の政策は財政出動により子育て支援(=所得増)をおこなうと同時に労働規制により労働時間の削減(可処分時間の上昇)を目指します。(1)のルートでは全セクターへの賃金上昇には繋がらないので、賃金上昇でなく可処分所得の上昇を目指します。またゆとりある生活のために労働時間の削減も目指します。

(3)の政策では税制改革で分配の見直しを提言しています。再分配に関しては二つのアプローチがあり、一つは高所得者から低所得者への再分配、もう一つは株主から雇用者への再分配(労働分配の見直し)です。これらの政策は所得再分配を通じて低所得者や労働者の可処分所得を増大させる政策です。

 再分配はそれにより得する人と損する人がいますので、どうしても経済全体の成長のエンジンとしては弱いのですが、立憲の政策の根底には経済成長よりも、ときには「公正な社会」の構築が優先されるべきという考えがあるように感じられます。

 立憲民主党の経済政策は、公正な分配により人間のための経済を具現化するもので、未来への責任をまっとうし、活力ある共生社会をつくる、教育や福祉などの社会政策と表裏一体である。〈ボトムアップ経済ビジョン(発表用資料)より〉

(4)は企業(事業者)対策についてですが、基本的には社会保険料負担の軽減や所得保障制度、公共事業など財政負担が発生する項目が多いです。財源の一部に炭素税の導入を主張しています。強制的な賃金上昇だけおこなうと企業の生産コストが上昇して経済に悪影響が出るので、それを補う政策を主に財政出動に頼っておこなうという考えでしょう。

整理すると、

(1)の政策 労働規制強化による一部セクターの賃上げ
(2)(4)の政策 財政出動による一部の家計の可処分所得と一部の事業者所得の増大
(3)の政策 税制改革による再分配の促進

 となります。結局は財政政策に頼るのですが、立憲の現在の考えはマクロ政策で全体の経済成長を高めると国民全体が潤うという考え(いわゆるトリクルダウン効果)に懐疑的なので、ミクロの政策で個別に所得を上げていくアプローチになります。

拡大立憲民主党の経済政策を発表する枝野幸男代表(左)。右は逢坂誠二政調会長=2019年6月20日、国会内

 実はこのような考えは日本の政治において長く主流の考えでした。「マクロ経済政策」という考えを持っていた政治家ももちろんいましたが、多くの政治家の経済に関する考えは一定の「地域」や「産業」に対して財政的支援や保護規制の導入などを主張するものでした。

 問題はこれらの所得増大支援策は基本的には「一時的な」政策であり、財政的支援が終わってしまえば効果がなくなり持続的でない政策ということです。立憲の政策で言えば、財政出動で一時的に家計の可処分所得を上げれば、その分消費も増えますが、財政出動が終われば消費も下落してしまいます。

 立憲の雇用者の実質可処分所得を引き上げる各種政策も、支援対象が「地域」や「産業」ではなく、低所得層や子育て層を対象とするもので、継続的に成長率を上げる政策ではないかもしれません。そういった意味では財政・税制を用いた再分配を通じた立憲の描く社会像を反映しているとも言えます。

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筆者

与謝野 信

与謝野 信(よさの・まこと) ロスジェネ支援団体「パラダイムシフト」代表

1975年東京生まれ。中学2年から父親の海外転勤に伴いフランスとイギリスで5年間過ごす。1999年に英国ケンブリッジ大学経済学部卒業後、外資系証券会社に入社し、東京・香港・パリでの勤務でデリバティブや資産運用に関わる業務に従事。2019年4月、氷河期世代支援の政策形成をめざすロビー団体「パラダイムシフト」を発足した。 TOKYO自民党政経塾生(第11期)2017年千代田区長選出馬(次点)、同年衆院選自民党比例東京ブロックから比例単独で出馬(次点) 財務相、官房長官を歴任した故・与謝野馨は伯父にあたり、歌人の与謝野晶子は曽祖母にあたる。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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