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レアアース中国依存脱却の切り札・ライナスとは

オーストラリアの世界最大級レアアース資源開発会社の安定稼働に一役買う日本

佐藤剛己 ハミングバード・アドバイザリーズ(Hummingbird Advisories)CEO

尖閣事件受け、民主党政権が動く

拡大2010年11月4日にユーチューブに投稿された尖閣諸島沖で中国漁船が日本の巡視船「みずき」に衝突した瞬間。衝突はは2010年9月7日にあった=海上保安庁提供
 尖閣諸島沖の事件の翌月(2010年10月)、当時の菅直人首相率いる民主党政権はレアアース総合対策補正予算を利用し、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と双日の共同投資で、ライナスの精錬機能拡張を狙った。2011年2月には当時の海江田万里・経済産業大臣がオーストラリアを訪れ、資源エネルギー大臣にレアアースの安定供給を要請した。

 具体的な仕組みとしては、JOGMECと双日が「日豪レアアース株式会社」(Japan Australia Rare Earths B.V.)をオランダに設立して2億5000万米ドルを共同出資。ここがライナスに対する出資や融資を実施した(JAREへの出資額はJOGMECが94%。双日出資分は残り6%とみられるがはっきりしない)。ライナスはJAREからの融資などをもとに、オーストラリア国内でのマウント・ウェルド鉱山開発や、マレーシアでの精錬所建設を始めることを計画した。2011年6月には、三菱UFJファイナンシャルグループが、株式を保有していたモルガン・スタンレーを通じて、ライナス本体に9.99%を出資する形となった。

 マレーシアの精錬工場はパハン州クアンタン(Kuantan)にあり、Lynas Advanced Materials Plant(LAMP)と呼ばれる。西オーストラリアのマウント・ウェルド鉱山で採掘した鉱石をマレーシア・パハンの精錬工場まで運んで精製する計画だった。レアアースの精錬過程では放射性物質が出るものの、国際原子力機関(IAEA)は2011年6月、いくつかの技術的改善を前提に事実上のゴーサインを出した。

厳しい経営を迫られたLAMP

 しかしマレーシアには、西隣りのペラ州でかつて三菱化学(現三菱ケミカル)が一部所有したAsian Rare Earth(ARE)のレアアース精錬工場での苦い記憶があった。工場からの汚水などにより、周辺住民が甚大な健康被害(白血病や異常出産など)を受けたとして、大きな反対運動が起きたのである。

 裁判では、工場汚水と健康被害の因果関係は否定されたものの、AREは1億米ドルをかけて土地を洗浄したうえ、1994年に工場を閉鎖した。2009年11月、三菱化学は工場跡地に廃棄物処理施設を設置した。

 このため、LAMP工場建設に際しても、国内外NGOが操業反対を表明。2011年7月には、政府機関The Malaysia Medical Association(MMA)もLAMPの安全操業に疑問がある旨の声明を発表した。

 反対派が問題視したのは、原材料から除去されたトリウムやウラニウムなど放射能を含む廃棄物の扱い、保存、処分方法である。1時間当たり500トンの汚水を、南シナ海に注ぐバロク川(Balok River)に垂れ流していることなども問題視していた。ライナス側は、廃棄物はマレーシア法令に従って処理していること、商業的には二次利用が可能で再販できること、工場は地元雇用に貢献し、比較的に高い給与を支払っているとして、反論した。

 地元の反対やレアアース価格の低迷を受けて、LAMPはなかなかフル稼働に至らず、厳しい経営を強いられてきた。当初、2012年終盤にはオーストラリアの鉱山開発やマレーシア精錬工場の拡張などを経て、年間2万2000トンを生産する予定だった。日本からの投資もこの生産数値がベースになっている。実際、操業から少しずつ生産量を増やしていたものの、2019年6月時点の会社公表データによれば、2018年7月―2019年6月の1か年で1万9737トンで、目標には及んでいない。

拡大tab62/shutterstock.com

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筆者

佐藤剛己

佐藤剛己(さとう・つよき) ハミングバード・アドバイザリーズ(Hummingbird Advisories)CEO

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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