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トランプの意に反する証言をしたビンドマン

大統領弾劾に垣間見えたアメリカの良心/翻って日本は…

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

異常なトランプ

 トランプ政権が発足してから、我々は理想としてきたアメリカの民主主義と異なる政治を見ることになった。

 多数の人種からなり多くの文化が影響し合うアメリカを、アメリカ人は誇らしげに“人種のるつぼ”(a melting pot)と呼んできた。我々も、多様な文化や人々を受容する力こそ、アメリカ発展のエネルギーだと思ってきた。

 しかし、トランプは、戦後多くの人たちが克服するよう努力してきた人種差別を容認するような発言を行ったり、黒人、イスラム、ヒスパニック系の少数派の人たちを攻撃したりした。これは、少数派の人たちによって雇用や社会の安定を損なわれていると感じている白人労働者層の人たちに熱狂的に迎えられた。こうしてトランプは、アメリカの分断を煽り、さらに悪化させた。

 外交面でも、トランプが好きなのは、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩委員長、中国の習近平主席などの非民主主義国の独裁者たちである。

 ロシアが2016年の大統領選挙にサイバー攻撃を仕掛けたのはトランプ政権内でも一致した見解なのに、プーチンが否定しているから、そのようなことはなかったのだと記者会見で発言している。トランプは、アメリカ政府内の意見よりも、これらの独裁者の主張に理解を示す。

 本来同盟国であるはずのヨーロッパ諸国に対しては、防衛費をもっと増加しろとか対米貿易黒字を縮小しろと要求するなど、むしろ敵国のような対応をとっている。反射的に、EUから離脱しようとしているイギリスのジョンソン首相を「イギリスのトランプ」だと持ち上げている。

 最近でも、シリアから米軍を撤退させて、IS掃討のためアメリカと協力してきたクルド人勢力をトルコ軍が攻撃する道を開いてしまった。そのうえ、超党派の連邦議会議員の反対があるのに、トルコの独裁的なエルドアン大統領をホワイトハウスに招き、共同会見で「私は大統領の大ファンだ」と主張している。

 移民政策でも、中南米からの移民が犯罪や麻薬の元凶となり雇用を奪っているとして、議会の予算決議を無視してメキシコ国境に壁を建設している。貿易面でも自由貿易が雇用を奪ってきたとして、TPPから離脱したほか、WTO協定を無視して、鉄鋼の関税を上げたり、中国に関税競争を仕掛けたりしている。

拡大ホワイトハウスで行われたトルコのエルドアン大統領との共同会見で、記者からの質問に答えるトランプ大統領=2019年11月13日、ワシントン

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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