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トランプの意に反する証言をしたビンドマン

大統領弾劾に垣間見えたアメリカの良心/翻って日本は…

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

ロシア疑惑とウクライナ疑惑

 トランプに対しては、ロシア疑惑をめぐって弾劾すべきだという意見があった。

 しかし、国民の投票で選ばれた大統領の職をはく奪する行動を開始することについては、民主党のナンシー・ペロシ下院議長は消極的だった。また、下院が弾劾手続きを開始しても、上院議員の3分の2の賛成がなければ弾劾を決定できないため、共和党が上院の多数を占める以上、実現は困難と考えられた。ペロシは返り血を受けることを懸念した。

 ロシア疑惑では、トランプの側近らとロシア側との共謀はあったのか、トランプによる司法妨害はあったのかについて、1年10か月もかけてモラー特別検察官による捜査が行われた。

 モラーは、共謀については認定しなかったが、司法妨害については、大統領による司法妨害を示す事例を数多く指摘する一方、大統領が罪を犯した証拠はないが、潔白が証明されたわけでもないと結論付けた。その際、司法省の内規により、大統領は訴追されないと述べ、辞職後の刑事訴追の可能性を示唆した。ところが、トランプは共謀も妨害もないことが明らかになったと主張した。

拡大4人から証言を聴いた米下院の公聴会=2019年11月19日、ワシントン

 しかし、今回のウクライナ疑惑については、ペロシも弾劾に踏み切ることになった。

 発端は、トランプとウクライナの大統領との電話会談で、ロシアからの侵略を防ぐための軍事援助約4億ドルを提供する見返りに、民主党のバイデン前副大統領とその息子のハンター・バイデンについて捜査するよう、トランプがウクライナ大統領に圧力をかけたとする、内部告発だった。内部告発者はホワイトハウスの関係者から情報提供を受けたCIA関係者だと言われているが、氏名は公表されていない。

 ジョー・バイデンは民主党の有力な大統領候補である。バイデンが副大統領だった時、息子のハンター・バイデンは、汚職是正をアメリカが求めているウクライナのガス会社・ブリズマの取締役として月5万ドル(550万円)の巨額な報酬を受けていた。トランプは、ウクライナ当局による汚職捜査をやめさせようと、バイデン前副大統領が不当な圧力をかけたのだと主張している。

 また、トランプは、ロシア疑惑を根底から否定するため、2016年のアメリカ大統領選挙に介入したのはロシアではなくウクライナであることを捜査するよう、ウクライナの大統領に要求したと言われている。

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。20年東京大学公共政策大学院客員教授。「いま蘇る柳田國男の農政改革」「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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