「人生100年時代」の働き方
70歳までの「就労機会」と「年金制度」改革
土堤内昭雄 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー
パート従業者などへの適用拡大
現在の厚生年金制度を持続可能にするためには、制度の支え手を増やすことが必要だ。
もともと在職老齢年金制度は2000年の年金制度改正において、賃金と年金の合計金額が現役世代の賃金収入を超える60歳代後半の高齢者の年金支給停止を決めたものだった。経済的に豊かな高齢者が現役世代の負担を軽減し、高齢世代内の大きな収入格差を縮小することが求められたからだ。
今回の年金改革では、パート従業者など非正規雇用者への適用拡大が検討されている。現在の厚生年金制度に加入するための「従業員501人以上の企業で、週20時間以上働き、月収8万8千円以上」などの適用条件を段階的に緩和するものだ。
厚生労働省の試算では、対象事業所規模を51人以上に引き下げると加入者は65万人、撤廃すると125万人増えて、年金制度の安定化につながる。ただし、厚生年金の保険料は労使折半のため、中小企業では保険料負担が経営の重荷になるのではないかという懸念もある。
今日では非正規労働者の割合は約4割に上り、人生100年時代のセーフティネットとして、将来の低年金や無年金の人の増加をどう防ぐかも重要な課題だ。働く人の雇用形態や企業規模で処遇が異なることは不合理であり、政府は企業規模の撤廃に向けて改革を進めるとしている。
「雇われない」働き方
本格的な人口減少時代を迎え、高齢期の就業人口の確保は重要な課題だが、加齢が進む高齢期の働き方は現役時代と大きく異なる。これまでの厚生年金制度の適用事業所で適用条件を満たす働き方が望ましいとは限らない。
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