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葡萄や林檎は気温上昇に耐えられるか

異変が続出! 地球温暖化に悲鳴を上げる農作物

木代泰之 経済・科学ジャーナリスト

リンゴの栽培適地は北海道、東北北部などに縮小する

 リンゴはどうだろうか。

 現在、リンゴ産地の多くは気温がかなり高い時期に収穫期を迎えており、赤色系は着色不良(緑色や白っぽくなる)が発生している。農水省によると、リンゴ栽培に適する年平均気温は6~14度の範囲で、現在は北海道の一部と本州北半分の広い地域が栽培適地になっている。

 しかし、2040年代には東北南部の全域や中部の平野部まで14度以上になる。結局、日本のリンゴ栽培の適地は青森県や岩手県の山間地、北海道ぐらいになくなるという。

拡大高温下でも濃赤色に色づく新品種「錦秋」=農研機構HPより

 リンゴ生産・消費の縮小を防ごうと、農研機構が2018年に開発したのが上記写真の「錦秋」である。「肉質が緻密で歯ざわりが良く、糖度が高く適度な酸味もあるので、食味が濃厚」が売り物だが、リンゴは品種の切り替えから出荷まで年月がかかる。気温上昇に間に合うかどうかが課題である。

ミカンは皮と果肉が分離する「浮皮」が起きている

 次は冬場に欠かせない温州ミカン。栽培に適した年平均気温は15~18度であり、本州以南の温暖な沿岸部で栽培されている。

 気温上昇の影響は、下の写真左側の「浮皮」という、皮と果肉が分離した状態で現れる。消費者にとっては「皮をむきやすいみかん」だが、専門家は「腐敗しやすい」「食味が悪い」と捉えている。

拡大左が浮皮状態、右が正常なミカン=農研機構HPより

 浮皮は特殊な農薬で軽減できることが確かめられており、農水省はその農薬散布を推奨している。しかし、環境省はIPCC第5次報告書の付属報告書で「2100年には(日本には)作付け適地がなくなる」と述べ、事態の深刻さを浮き彫りにしている。


筆者

木代泰之

木代泰之(きしろ・やすゆき) 経済・科学ジャーナリスト

経済・科学ジャーナリスト。東京大学工学部航空学科卒。NECで技術者として勤務の後、朝日新聞社に入社。主に経済記者として財務省、経済産業省、電力・石油、証券業界などを取材。現在は多様な業種の企業人や研究者らと組織する「イノベーション実践研究会」座長として、技術革新、経営刷新、政策展開について研究提言活動を続けている。著書に「自民党税制調査会」、「500兆円の奢り」(共著)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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