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関電は信頼回復できるか~問われる企業統治

加藤裕則 朝日新聞記者

関電監査役に元検察幹部

 関西電力の金品受領問題は、産業界がこれまで築いてきたコーポレート・ガバナンス(企業統治)の信頼性を大きく揺るがした。企業統治を中心とした会社法改正案の国会審議にも影を落とした。規制当局や企業の規律を考える民間団体も対応を急ぐ。資本市場の健全さが試されている。

関電の金品受領問題 関西電力の岩根茂樹社長は2019年9月27日、記者会見を開き、八木誠会長を含む役員ら20人が2018年までの7年間に、個人的に計3億2千万円分の金品を受け取っていたことを発表した。10月2日に2回目の会見を開き、福井県高浜町の森山栄治・元助役=今年3月に90歳で死去=から受け取っていたことなど社内調査の報告書を公表した。10月9日にも会見し、岩根社長らが辞任を表明した。対応が後手後手に回ったことも批判された。2018年の社内調査も国税局の査察がきっかけで、今年9月の記者会見も報道を受けて開いたものだった。関電によると、3億2千万円のうち1億2450万円は事前に返していたが、約1億6千万円は査察を機に戻し、3487万円分は未返却という。

 11月28日午後、参院法務委員会で嘉田由紀子議員が質問に立った。滋賀県知事のときに辞任表明した関電の岩根茂樹社長らと付き合いがあったが、「断定的なことを言わない、官僚のような人だった」。その岩根社長らが記者会見で「不適切だが違法性はない」と断言したことに、嘉田氏は驚いたという。

 不思議に思った嘉田氏は、関電の役員構成を見て納得した。社外監査役の一人に検察庁の元幹部が就いていたためだ。

 検察庁はあらゆる事件の捜査で、違法性を判断して公判請求するかどうかを判断する。このため嘉田氏は打ち合わせがあった可能性を指摘した。

 関電の有価証券報告書によると、社外監査役は今年6月までの16年間を元検事総長が務め、その後も元大阪高検検事長が継いでいた。社外取締役にもメガバンクや大手メーカーの元会長ら大物が名を連ねる。

 この日の参院法務委員会では、社外取締役の義務づけ案が審議された。嘉田氏ら複数の議員が次々と関電の金品受領問題を例にあげ、「(社外監査役など)社外役員が機能していないのでは」との疑問を呈した。

 法務省は今後、社外役員が機能する体制にも取り組んでいくことを訴え、理解を求めた。義務づけは決まったが、今後、社外取締役ら社外役員に対する厳しい目が注がれそうだ。

拡大2019年11月28日の参院法務委員会(筆者撮影)


筆者

加藤裕則

加藤裕則(かとう・ひろのり) 朝日新聞記者

1965年10月、秋田県生まれ。岩手大人文社会科学部卒業。1989年4月に朝日新聞社入社。静岡支局や浦和支局(現さいたま総局)などに赴任した後、1999年東京本社経済部員。その後、名古屋や大阪でも経済記者を務めた。経済部では通産省(現・経産省)、鉄鋼業界、トヨタ自動車(名古屋)、関西空港・神戸港などを取材した。コーポレート・ガバナンスや会計監査について自主的に取材を重ねてきた。2014年9月から石巻支局員として東日本大震災からの復興の過程を取材。2018年4月から東京本社の経済部員として経団連などを担当している。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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