最も高い成長率を達成しているインドは日本企業にとって重要かつ有望な投資先だ
2019年12月13日
かつて、中国とインドを中心とするアジア地域は世界経済の中心だった。
イギリスの経済史の専門家アンガス・マディソン(1926~2010年)よると、1820年の時点で、世界のGDPの29%は中国、16%はインドだったという。2ヶ国で世界のGDPの半分近くを占めていたのだ。
18世紀、17世紀、16世紀とさらに時代を遡ると、両国のシェアは7割近くになるという。
ただ、アジアは19世紀半端から欧米によって植民地化され、急速にその経済力を弱体化させていった。
香港がイギリスの植民地になったのが1842年、九龍半島は1860年に植民地化されている。インドでも1858年にムガール帝国が滅亡し、1877年にはイギリスの植民地になっている。
アジアで植民地化されなかったのはタイと日本だけだが、タイは事実上イギリスの支配下にあった。
日本は明治維新を経て、富国強兵策をとり、なんとか欧米による植民地をまぬがれた。そればかりか、日清戦争(1894~1895年)、日露戦争(1904~1905年)に勝利し、欧米列強とそこそこ肩を並べる「強国」へと変わっていったのだった。
第二次世界大戦ではアメリカに惨敗するのだが、当時、日本が大義として掲げた「アジア解放の夢」は大戦後実現していくことになる。1945年にベトナム、46年にフィリピン、47年にインドとパキスタン、49年にはインドネシアが次々独立を達成することになったのだ。ビルマの元首相バーモウは「日本が欧米と戦えることをアジアに教えた」のだと述べている。
第二次世界大戦後、アジアは世界で最も高い経済成長率を達成することになる。まず、高度成長をとげたのは日本(1956~73年、年平均9.1%の成長率)、これに台湾・シンガポール・韓国・香港が続いたのだ。
1979~2008年の30年間の世界の成長率のトップはすべてアジアの国々だった。トップは中国の9.8%、これにベトナム(6.6%)、ミャンマー(6.4%)、マレーシア(6.3%)、韓国(6.3%)、台湾(6.3%)、ラオス(6.1%)、タイ(5.8%)、インド(5.8%)等が続いた。
2010年代に入って中国は減速し、2015年には6%台に(6.9%)2020年には5%台に落ち込むと予測されている。(2020年の予測はIMFの「世界経済見通し」2019年10月)
逆に、インドは成長率を高め、2015年には中国を抜いて8.0%に、2020年もIMFの予測によると7.0%の成長を達成するとされている。
イギリスに本拠を置くコンサルティング会社、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の試算によると、2050年のGDPのトップは中国(PPPベースで58.499兆ドル)、これにインドが続き(44.128兆ドル)3位がアメリカ、4位はインドネシア、日本は8位とされている。トップ8のうち、実に4ヶ国がアジアの国々ということなのだ。
2016~2050年の年平均成長率は、PwCの推計によると、トップがベトナムの5.0%、これにインド(4.9%)、バングラデシュ(4.7%)、パキスタン(4.3%)、フィリピン(4.2%)、ナイジェリア(4.1%)、エジプト(4.1%)、南アフリカ(3.8%)、インドネシア(3.7%)、マレーシア(3.5%)が続くとされている。そしてトップ10のうち7か国がアジアの国々なのだ。
つまり、2000~2050年の50年間は「アジアの時代」ということなのだ。まさに「リオリエント」現象が実現し、アジアが再び世界経済の中心になるというわけなのだ。
日本にとっても、これからはアジア外交が極めて重要になってくる。
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