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JR北海道を三分割せよ

新幹線は後世にとって負の遺産。ローカル線はすべて廃止しバスに転換を

福井義高 青山学院大学国際マネジメント研究科教授

輸送内容の劇的変化

 北海道の輸送量は分割前後とほとんど同じながら、その内容は大きく変わった。

 図表2に示したように、JR北海道となってから、定期輸送量は順調に増え、初年度1987年度の9.9億人キロが2018年には14.5億人キロとなる。一方、定期外輸送量は1987年度に青函連絡船換算分を加えると32.7億人キロだったのが、2018年度には新幹線・在来線計で28.2億人キロまで減っている。

拡大図表2

 北海道に限らず、ローカル線列車に乗ると、利用者の大半が通学する高校生であることがわかる。とはいえ、少子化で高校生の数は減る一方である。北海道で定期輸送量が増えたのは、国鉄時代なおざりにされてきた札幌都市圏輸送が激増したからである。

拡大図表3

 図表3は、国鉄最後の1986年度と直近の2018年度の幹線の輸送密度(1日1キロ当たり平均輸送人員)を比較したものである。

 通勤路線である札幌(桑園)と北海道医療大学を結ぶ札沼線は5千人から3倍以上増え1万8千人に、札幌(白石)と苫小牧を結ぶ千歳線は2万2000人が2倍強増え4万6千人となった。千歳線に関しては、国鉄時代から北海道の玄関口が函館から千歳空港に移りつつある実態に合わせた列車運行を始めており、1992年7月の空港乗入線の開業でさらに進んだことも大きい。

拡大札沼線電化。大勢の町民が小旗や横断幕を手に電車を迎えた=2012年6月1日、北海道当別町のJR石狩当別駅

 札幌近郊路線の激増に対し、同じ幹線でも苫小牧と長万部を結ぶ室蘭線の輸送量は6.7千人から5.7千人に減少している。また、新幹線が開業したにもかかわらず、青函トンネルの利用者は4.6千人で、トンネル開業前でまだ青函連絡船だった国鉄最終年度の5.5千人よりも少ない。それでもローカル線の惨状に比べれば、まだましである。

拡大図表4

 図表4は、旭川と網走を結ぶ石北線、旭川と稚内を結ぶ宗谷線、釧路(東釧路)と網走を結ぶ釧網線の三つの現役路線と、国鉄末期に特定地方交通線に選定され分割前後に廃止となった6線区(広尾線、池北線、名寄線、羽幌線、天北線、標津線)について、1977~79年度平均、1986年度及び2018年度(現役路線のみ)輸送密度を比較したものである。

 北海道で特定地方交通線に選定された22線区1453キロのうち、広尾線は最も輸送量が多かった路線のひとつであり、その他5線区はすべて100キロを越える長大路線である。また、池北線は北海道で選定された路線で唯一、バス転換ではなく、第三セクター「北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」として残ったものの、2006年に廃止された。

 1977~1979年度三年間の平均を示したのは、この数値が特定地方交通線選定の基準になったからである。

 国鉄改革が具体化する前の1980年、国鉄再建促進特別措置法に基づき、国鉄は輸送密度4千人未満の路線を原則廃止しバス転換する方針を打ち出す。ただし、廃止基準に該当する134線区7610キロすべてではなく、第1次から第3次の三回にわたり、全国で合計3160千キロ83線区が特定地方交通線に選定され、バス転換あるいは第三セクター(38線区1310キロ)に引き継がれた。輸送密度2000人未満の路線は大半が選定された一方、2~4千人の路線のうち選定されたのは1割程度で、JR西日本管内の大社線(島根県)を除き第三セクター化された。

 国鉄末期の路線廃止に対する考え方で注意を要するのは、儲からないという理由ではなく、鉄道としての特性が発揮できないというのが理由であったことだ。だからこそ、基準である4千人未満でも、最混雑時の輸送量、道路整備状況、平均乗車距離などを勘案し、バス転換が困難とされた51線区4450キロは特定地方交通線に選定されなかったのである。

 その結果、基準未満の輸送量しかないのに、石北、宗谷、釧網などのローカル線はJR北海道に引き継がれた。

 しかし、分割から30年以上が経過し、人口が減少するなか、道路整備が進み、JR北海道に引き継がれたローカル線の輸送量は激減した。輸送密度でみると、石北線は1977~1979年度平均の3.7千人が、1986年度には2.4千人となり、2018年度は0.8千人。同じく、宗谷線は2.4千人、1.3千人、0.6千人、釧網線は1.4千人、0.9千人、0.4千人と推移している。3線区とも、2018年度の輸送密度は、廃止された路線の1977~1979年度平均並みかそれ以下で、広尾線の1986年度数値に及ばない。

拡大セレモニー列車の出発合図を送る新夕張駅の田渕浩二駅長=2019年3月31日、北海道夕張市のJR夕張駅

 ローカル線を廃止すると、沿線の衰退に拍車がかかるという指摘がある。しかし、図表5に示したように、1986年と2018年の人口を比較すると、現役路線である石北線の拠点都市の網走市は43.2千人から35.8千人に、宗谷線の拠点である稚内市は51.2万人から34.2千人にそれぞれ減少しているのに、廃止された標津線の拠点だった中標津町の人口は、逆に21.7千人から23.5千人に増えている。札幌一極集中が顕著な北海道で、札幌から遠く離れているにもかかわらず、この人口増は特筆に値する。地域振興にとって、ローカル線はもはやどうでもよい存在であることを示す好例ともいえる。

拡大図表5

 JR北海道の三十年有余の歴史が示しているのは、鉄道の特性が発揮できる路線ともはや使命を終えた路線への二極化である。実はこの事実こそ、JR北海道再生のカギなのだ。

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筆者

福井義高

福井義高(ふくい・よしたか) 青山学院大学国際マネジメント研究科教授

青山学院大学国際マネジメント研究科教授。1962年生まれ、東京大学法学部卒。85年日本国有鉄道に入り、87年に分割民営化に伴いJR東日本に移る。その後、東北大学大学院経済学研究科助教授、青山学院大学国際マネジメント研究科助教授をへて、2008年から現職。専門は会計制度・情報の経済分析。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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