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老いにあらがう時代~豊かなエイジング社会を

「死」と正面から向き合うことで、よりよく生きるサクセスフル・エイジングに

土堤内昭雄 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

「老い」というエイジング

 昔から多くの権力者が不老長寿を求めてきた。高齢化が進む今日、だれもがいつまでも若々しくありたいと願い、アンチ・エイジングに向けて「老い」にあらがう。多くの可能性を秘めた「若さ」は素晴らしいが、長寿時代には「老い」を受け容れることも必要だ。

 ワインづくりで重要な工程のひとつが、ワインの味わいを左右する熟成(エイジング)だ。ワインづくりは人間の成長に似ている。日当たり、水はけ、気温など生育環境がワインの成長に大きな影響を与え、熟成の仕方で味わいがまったく変わるからだ。

 ワインの熟成にもピークがあるが、それを過ぎたワインの味わいも捨てがたいという。加齢とは歳を重ねる人生の熟成プロセスのことだ。一人ひとりの高齢期がワインのような独自の芳醇な香り漂う、豊かな「エイジング社会」になることが望まれる。

あふれるアンチ・エイジング市場

 毎日、新聞の紙面を広げてみると広告の多さに驚く。カラフルな全面広告も珍しくない。新聞のすべての広告をまとめ読みすると面白いことに気づく。内容がアンチ・エイジングに関するものがとても多いのだ。

 肩や膝の関節の痛みの緩和、育毛や養毛の促進、認知症の予防、肌の衰え防止、頻尿・尿漏れ対策など、多くの広告が加齢に伴う諸症状に対応する商品のものだ。だれしも高齢になるとわかるが、あちこちの関節が痛む、髪の毛が薄くなる、記憶力や判断力が鈍る、シミが増える、トイレが近くなるという現象は、加齢とともに間違いなく起こるのだ。

 若いころには気にも留めなかった尿漏れ防止パッドや下着などの広告が、新聞の紙面に毎日掲載されている。海外旅行に行くとき、多くの高齢者は飛行機の通路側の席を希望する。長い時間のフライトで、他の乗客に遠慮なくいつでもトイレに行けるからだ。

 「長寿」がリスクとしか思えない時代になり、アンチ・エイジングのための医薬品や健康食品、サプリメントなどの商品があふれている。膨大な宣伝広告費を費やしてもビジネスが成立するのは、長寿社会の「老い」を必要以上に恐れる強迫観念があり、それがアンチ・エイジング市場の過剰消費を生んでいるのかもしれない。

拡大Ruslan Huzau/Shutterstock.com

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筆者

土堤内昭雄

土堤内昭雄(どてうち・あきお) 公益社団法人 日本フィランソロピー協会シニアフェロー

1977年京都大学工学部建築系学科卒業、1985年マサチューセッツ工科大学大学院高等工学研究プログラム修了。1988年ニッセイ基礎研究所入社。2013年東京工業大学大学院博士後期課程(社会工学専攻)満期退学。 「少子高齢化・人口減少とまちづくり」、「コミュニティ・NPOと市民社会」、「男女共同参画とライフデザイン」等に関する調査・研究および講演・執筆を行う。厚生労働省社会保障審議会児童部会委員(2008年~2014年)、順天堂大学国際教養学部非常勤講師(2015年度~)等を務める。著書に『父親が子育てに出会う時』(筒井書房)、『「人口減少」で読み解く時代』(ぎょうせい)など。

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