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あなたの知らない農村~養豚農家は所得2千万円!

現代日本の農村に「おしん」はいない。国民の血税で所得補塡する必要はない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

影響がないのに講じられた農家対策

 これまで政府は、米国も入っていたTPP合意への対策として、毎年3千億円の農家対策を講じてきた。今回の日米交渉で、政府はTPPの範囲内に農産物の譲歩を収めたと主張している。それならこれまでの対策だけで十分なのに、TPP交渉対策にさらに上乗せした対策を講じようとしている。

 そもそも、日本農業の重要品目と言われるもののうち、TPP等で関税を削減したのは、牛肉(38.5%を16年かけて9%へ削減)と豚肉くらいである。これで影響はあるのだろうか?

 結論から言うと、農林水産省自身大きな影響はないと主張していたのに、対策が打たれてきたのである。しかも、農林水産省が大きく見積もっても生産の減少は2千億円としているのに、それを上回る対策費となっている。

 今から8年前100円の牛肉が輸入されたとして、38.5%の関税がかかると138.5円で国内市場に入ってきた(この関税が9%になったら109円となる)。しかし、当時から比べると35%程度円安になっているので、当時100円の牛肉は関税なしでも135円で輸入される。これに9%の関税がかかると147円で国内市場に入ることになる。8年前の状態と比較すれば、牛肉は関税が削減されても円安によって保護水準はむしろ高まることになる。

 豚肉については、特殊な関税制度によって関税が下がっても、今までと同様の価格で輸入される仕組みになっているので、関税削減・撤廃の影響はない。複雑な制度なので詳細な説明は省くが(知りたい方は、小著「TPPが日本農業を強くする」を参照されたい)、これは、農林水産省自身がTPP交渉の成果として誇らしげに語っていたことである。

拡大養豚農家

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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