安倍首相は自民党総裁選を含め毎年選挙をしている状態で農林族の意向を無視できない
2020年01月19日
今回の日米貿易協定で農家が影響を受けるとして、安倍政権は畜産を中心にTPP対策に上乗せした対策を実施する。影響がないのに対策が打たれるのは、6兆100億円を投じたウルグアイ・ラウンド対策の繰り返しである。
日米貿易協定やTPP11で多少関税が下がったとしても農家は影響を受けない。
すでにTPP11が発効して1年以上が経過し、オーストラリアやカナダから輸入される牛肉の関税は38.5%から25.8%へ10%以上も削減されている。しかし、国内産の牛肉や子牛の価格は歴史的な高水準にあり、関税削減の影響はほとんど見られない。和牛主体の国産牛肉と輸入牛肉とでは品質の差から一定の棲み分けが行われているからである。
しかも、酪農や養豚などの大規模経営では農家所得が4000万円を超えるなど、畜産経営はバブルと言ってよいほど絶好調である。
他方、就職氷河期の世代は未だに50万人が非正規雇用だと言われている。
厚労省が10名の正規雇用を募集したところ190倍の応募があった。低い賃金で苦しい生活を強いられている非正規雇用などの人がいるのに、国民の平均年収の数倍以上の所得を持つ農家に、国民納税者の負担で補助金を交付することが適当なのだろうか?
狭いアパートでカップラーメンをすするしかない人がいるのに、ポルシェに乗ってフォアグラやキャビアを食べているような人の所得をさらに上げることに懸命になっている政治というのは、どこかおかしいのではないだろうか?
前3回の記事(『あなたの知らない農村~養豚農家は所得2千万円!』『続・あなたの知らない農村~酪農は過重労働?』『農家はもはや弱者ではない』)で述べたように、日本の畜産は輸入された穀物を飼料とする。草地から作られる牧草を飼料にしていた北海道の酪農でも、輸入穀物への依存度が高まっている(飼料費のうち購入した穀物等の流通飼料費の割合は7割を超えている)。
畜産を保護する理由は、食料安全保障、環境保全、国民の健康・生命の維持のいずれの観点からも、ないと言ってよい。国民経済の観点に立つと、外部不経済効果を持つ畜産は、保護や振興するのではなく、課税し縮小しなければならない。
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