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安倍官邸もアンタッチャブルな農業保護政策

安倍首相は自民党総裁選を含め毎年選挙をしている状態で農林族の意向を無視できない

山下一仁 キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

バブルの畜産経営と非正規雇用の人々

 今回の日米貿易協定で農家が影響を受けるとして、安倍政権は畜産を中心にTPP対策に上乗せした対策を実施する。影響がないのに対策が打たれるのは、6兆100億円を投じたウルグアイ・ラウンド対策の繰り返しである。

 日米貿易協定やTPP11で多少関税が下がったとしても農家は影響を受けない。

 すでにTPP11が発効して1年以上が経過し、オーストラリアやカナダから輸入される牛肉の関税は38.5%から25.8%へ10%以上も削減されている。しかし、国内産の牛肉や子牛の価格は歴史的な高水準にあり、関税削減の影響はほとんど見られない。和牛主体の国産牛肉と輸入牛肉とでは品質の差から一定の棲み分けが行われているからである。

 しかも、酪農や養豚などの大規模経営では農家所得が4000万円を超えるなど、畜産経営はバブルと言ってよいほど絶好調である。

 他方、就職氷河期の世代は未だに50万人が非正規雇用だと言われている。

 厚労省が10名の正規雇用を募集したところ190倍の応募があった。低い賃金で苦しい生活を強いられている非正規雇用などの人がいるのに、国民の平均年収の数倍以上の所得を持つ農家に、国民納税者の負担で補助金を交付することが適当なのだろうか?

 狭いアパートでカップラーメンをすするしかない人がいるのに、ポルシェに乗ってフォアグラやキャビアを食べているような人の所得をさらに上げることに懸命になっている政治というのは、どこかおかしいのではないだろうか?

拡大I Love Coffee dot Today/Shutterstock.com

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筆者

山下一仁

山下一仁(やました・かずひと) キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

1955年岡山県笠岡市生まれ。77年東京大学法学部卒業、農林省入省。82年ミシガン大学にて応用経済学修士、行政学修士。2005年東京大学農学博士。農林水産省ガット室長、欧州連合日本政府代表部参事官、農林水産省地域振興課長、農村振興局整備部長、農村振興局次長などを歴任。08年農林水産省退職。同年経済産業研究所上席研究員。10年キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。「フードセキュリティ」「農協の大罪」「農業ビッグバンの経済学」「企業の知恵が農業革新に挑む」「亡国農政の終焉」など著書多数。

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