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マスコミが無視したクルーグマンから安倍への助言

石炭火力に固執する安倍首相は、改めて気候政策のアドバイスを求めてはどうか

山口智久 朝日新聞オピニオン編集長代理

地球温暖化の危機

 ニューヨーク・タイムズのコラムニストでもある経済学者ポール・クルーグマン氏のコラムを1月17日付の朝日新聞オピニオン面「コラムニストの眼」に載せた。このノーベル経済学賞受賞者が、ここ数年は地球温暖化の危機を警告し続けていることを、どれくらいの日本人が知っているだろう。

クルーグマン氏のコラム(2020年1月17日付朝日新聞朝刊)

 クルーグマン氏は2016年3月に日本を訪れ、安倍晋三首相から意見を求められた。その年の5月に、日本は主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)を控えていた。

 首相とのやり取りは非公開という約束だったのに、クルーグマン氏はネットで公開してしまうというハプニングがあった。いまでもニューヨーク市立大学のサイトで見ることができる。

 これは当時ニュースになり、4月1日付の「朝日新聞」は二人のやり取りを次のように伝えた。

クルーグマン氏と安倍首相の会話を報じる朝日新聞(2016年4月1日付朝刊)
 首相は「オフレコ」としたうえで、「ドイツは財政出動の余地が最も大きい。ドイツを訪問し、さらなる財政出動を説得したい。何かいい知恵はないか」と質問した。
 教授は「見事な外交術は私の専門外なので」などと直接答えなかった。首相は重ねて「例えば、ドイツでは難民のための住宅投資や教育投資が景気刺激にならないか」と問うたが、教授は「難民のお世話には、大きな財政刺激策になるほどの費用はかからない」と否定的だった。

 ところがニューヨーク市立大学のサイトによれば、そうではない。

 話し言葉がそのままテキストになっているので、正確な翻訳は難しい。私が読みやすいように意訳したら「恣意的に訳した」と疑われかねないので、グーグルで翻訳したものをそのまま示す。安倍首相の最初の呼びかけに対してクルーグマン氏は、実は次のように答えたことになっている。

 それは難しいことであり、メルケル首相は他の人に夢中になっていると言っておきましょう。彼女もとても良かったですが、それは不可能な状況です。有る私が育てるべきだったと思うこと、可能性があるかもしれない1つの領域少なくとも、刺激のアクセス可能な形態である可能性のある何かを獲得し、それは、実際には気候政策であり、もちろん、いくつかの点で重要であることに加えてそれと比較して他に重要なことはありません。先進世界全体のグリーンテクノロジーへのシフトとしての投資。おそらく少なくとも前進することの望ましさに関するいくつかの声明、私たちはパリアコード(訳注:パリ協定)を持っています。それは物事が起こる可能性のある一つのルートかもしれません。もっと良い提案があればいいのに。華麗な外交は私が専門家ではありません。

 つまり、ドイツに財政出動させるための「知恵」を求めた安倍首相に、クルーグマン氏は「直接答えなかった」のではなく、はっきりと「気候政策」と答えたのだ。

日本メディアは「温暖化」を無視しがち

 これに対する安倍首相の反応をグーグルで翻訳すると:

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